認知症とは？

団塊の世代がすべて65歳以上になった2015年。302万人もの人が認知症に罹っているとされています。介護保険制度の要介護者の半数に見られるとも言われる認知症。認知症は、けっして他人事ではなくなっています。認知症とは、どのような病気なのでしょうか？

老化現象の物忘れとは違う

高齢になれば、誰でも新しいことを覚えるのが難しくなります。また、物忘れも多くなります。そのため、認知症を発症しても、ごく初期には、普通の老化現象と見分けがつきにくいと言えます。ただし、よく観察すると、老化による普通の物忘れと認知症による物忘れでは、2つの点で大きな違いがあります。体験したことのどこまでを忘れるのかということと、物忘れが進行するかしないかということです。老化による物忘れは、体験したことの一部を忘れます。逆に言うと、体験したことの中で覚えていることがあるということです。それに対して、認知症による物忘れでは、体験したことを丸ごと忘れます。記憶から体験がすっぽり抜けた状態になります。たとえば、家族で外食したとします。その時にデザートに何を食べたかを忘れるのは、老化による物忘れです。老化による物忘れでは、家族と外食したということは覚えています。店の名前は覚えているかもしれません。メインデッシュが何だったかということも覚えているかもしれません。認知症では、家族と外食したこと自体を忘れてしまいます。老化による物忘れは、進行しません。認知症による物忘れは進行します。認知症を発症した当初は、数日前のことを忘れることが多いとされています。ついで、聞いたばかりのことが覚えていられなくなり、次第に最近のことから忘れていくようになります。

見当識障害も起こる

認知症というと、物忘れの病気というイメージがあります。主な症状の一つに記憶障害があります。ただし、記憶だけが障害されるわけではありません。記憶障害と同じくらい問題なのが、見当識障害です。 見当識とは、自分がどのような状況に置かれているかということに対する理解です。今日が何年の何月何日か、ここがどこか、自分の相手をしている人間は自分とどのような関係なのかというようなことが、把握できなくなる状態を見当識障害と言います。 見当識の中では、日時や時間に関する理解が最初に曖昧になると言われています。認知症の診断の際に年齢を医師が尋ねます。認知症を発症していると、年齢を正確に答えられないことが非常に多いからです。ただし、分からないと答えることはあまりありません。実際よりも若く答えたり、「生まれは何年だから、先生、いくつかお分かりでしょう。」と微妙に逸らした答え方をしたりします。時間に関する見当識障害が進むと、季節を間違えることがあります。そのため、認知症が少し進むと、季節に合った服を自分で選んで着ることができなくなってきます。

生活に支障が出ている状態

認知症の発症に先立って、「軽度認知障害(ＭＣＩ）」という状態が見られることが、最近指摘されるようになりました。軽度認知障害とは、正常な老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているものの、認知症とは言えない状態のことです。主に記憶障害が認められます。日常の生活能力はほぼ保たれている状態です。軽度認知障害から認知症に移行すると割合は、4年後の状態で考えると、記憶障害だけが見られた軽度認知障害では24%、それ以外の認知機能にも障害が見られた軽度認知障害では77%とされています。軽度認知障害と病院で診断されても、認知症と診断されるまでには、通常5~10年、平均で6~7年かかるとされています。認知症と診断されるのは、認知機能の低下によって生活に支障が出てきてからです。軽度認知障害の段階で脳を活性化させる試みをすることで、認知症の発症を食い止めたり、遅れさせたりすることもできるようだと言われています。

認知症を根本的に治す方法は、現在、まだ見つかっていません。しかし、早期に治療に結びつけることができ、周囲の対応が認知症を理解したものなら、症状の進行をゆるやかなものにすることはできます。認知症に対する正しい知識を誰もが持つことが大切でしょう。

関連項目

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