認知症の原因はなに?
認知症は、正常に発達した脳が、何らかの原因で慢性的に病的な機能低下を起こす状態です。自分の衰えを痛感し、家族も能力の低下を切なく感じる病気です。認知症と診断されると、多くの人が原因を知りたくなるようです。
知能と関係する神経細胞の障害
脳の働きは、脳の神経細胞の活動がもとになっています。神経細胞には、知覚や運動を司るものの他、記憶や学習、判断を担う神経細胞があります。人では、知能と関係する神経細胞が発達して、脳を形作っています。細胞の老化によっても、神経細胞の働きは落ちます。新しいことを覚えるのが苦手になったり、物忘れが起こったりします。ただし、老化による衰えは、比較的緩やかです。記憶障害も軽い程度にとどまります。日常生活に大きな支障をきたすことはありません。認知症は、記憶や判断といった知的な能力の低下がある程度以上に進んで、日常生活に支障が出ている状態です。知能と関係する神経細胞の障害が、日常生活に支障をきたす状態になった時、認知症と診断されます。脳の神経細胞の働きを低下させる病気は、大部分が認知症とつながります。原因となる病気は多種多様です。甲状腺機能の障害やビタミン不足から認知症を発症することもあります。
脳の神経細胞の異常が原因の一つ
さまざまな原因疾患がありますが、患者数が多いのは、脳の神経細胞の異常が原因で起こる認知症です。脳の神経細胞の異常が原因で起こる認知症を「変性性認知症」と言います。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症などが、変性性認知症の代表疾患です。
アルツハイマー型認知症は、ベーター・アミロイドたんぱくと呼ばれる異常なタンパク質の塊が脳内に溜まりだすことで、健常な神経細胞を脱落させ、脳の萎縮が進行する病気と考えられています。なぜ、ベーター・アミロイドたんぱくが溜まりだすのかということは、まだ分かっていません。
レビー小体型認知症は、レビー小体という異常な構造物の蓄積が原因です。レビー小体とは、運動障害を主な症状とするパーキンソン病で、脳の中の中脳という部位に溜まっていることが問題とされてきた物質です。レビー小体が認知機能を司る大脳皮質にも広く蓄積されることで発症する認知症が、レビー小体型認知症です。レビー小体には、アルファ・シヌクレインというタンパク質が関わっているのではないかと言われています。レビー小体については、現在研究が進んでいます。
脳の神経細胞の異常が原因で起こる認知症は、MRIによる画像などで、脳にどのような異常が起こっているのかが、かなり明らかにされるようになりました。診断では、MRIなどの画像検査も行われます。
脳の血管の異常も原因の一つ
脳の血管の異常が原因で認知症が発症することもあります。脳血管性認知症です。脳血管性認知症は、脳血管疾患の後遺症の一つと考えられています。突然の脳血管障害をきっかけに急激に認知症が発症することもあります。しかし、1箇所だけの梗塞では、認知症は起こりにくいとされています。1つずつの梗塞は小さくても、脳のあちこちに梗塞が多発すると、認知症を発症します。 また、動脈硬化が強いと、血液の流れが極端に悪くなり、脳の機能が低下して認知症になることがあります。脳血管性認知症は、脳の血管のどの部位が障害されたかによって症状が異なります。できることとできないことが同時にバラバラと現れるのも特徴です。
まとめ
認知症は、発症したら元に戻らない状態ということも、かつては定義の中に入っていました。しかし、研究が進んで、認知症を起こすたくさんの病気が明らかにされるにつれて、治療が可能な認知症もあることが分かってきました。そのため、最近では認知症の定義を広く考えるようになってきています。規則正しい生活を送り、食習慣を見直すことで予防できる脳血管性認知症のような認知症もあります。認知症の原因は、まだ十分に解明されていないものもありますが、研究は確実に進んでいます。病的な知能低下が続いたら、認知症を疑って早期に病院を受診しましょう。
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