癌とはそもそも何なのか?その原因は?

高齢になると罹患率が上がるとされている病気の一つに、癌があります。治療法が年々進んできているとは言っても、定期検診等で癌の可能性を指摘されると、普通の人はひどく落ち込みます。まっすぐに進んできた人生が、先を見通せないものになった不安に苛まれます。そもそも癌とはどのような病気なのでしょうか。

細胞増殖の暴走

人間の体は細胞でできています。細胞は分裂して増えていき、古い細胞と新しい細胞が入れ替わったり、量が増えたりして成長していきます。細胞の増殖は、通常はある程度規則的に行われます。しかし、時に細胞が勝手に増えていくことがあります。細胞が勝手に増殖したのが腫瘍です。腫瘍には、良性と悪性があります。増殖のスピードがゆっくりしており、その場で大きくなるのみで、切除すればほとんど再発しないのが良性腫瘍です。異常に増殖し、周囲の組織にどんどん広がっていったり、別の場所で増殖を繰り返すようになることもあります。周囲の組織に広がることを浸潤、別の場所で増殖を繰り返すことを転移と言います。浸潤や転移を起こすようになると、悪性腫瘍です。悪性腫瘍が癌です。細胞が異常に増殖して浸潤や転移を起こしたのが癌だと言えます。良性腫瘍か癌かは、顕微鏡を用いた病理組織診断によって判断されます。

二通りの表記がある

がんの種類は、通常、胃がん・肺がん・肝臓がんというように、がんができた臓器の後ろに「がん」という言葉をつけて表します。ただし、それ以外にも、どの組織にがんができたかによって分類する方法もあります。消化管の粘膜や肝細胞などの細胞の表皮部分である上皮細胞にできた異常な細胞の塊は、漢字で「癌」と表記されます。漢字表記は、医学的には上皮細胞由来の悪性腫瘍に限定されます。骨、軟骨、筋肉など、臓器を結合する組織細胞にできた異常な細胞の塊は、「肉腫」と言います。「癌」と「肉腫」を総称して「がん」というひらがな表記を用いています。保険会社で「がん」というひらがな表記が採用されているのは、このような理由からです。ただし、「がん」の大部分を占めるのは、上皮細胞にできる「癌」です。

異常な細胞増殖の原因は遺伝子が傷ついたこと

癌のメカニズムは、まだ全てが解明されているわけではありません。現在有力なのは、多段階発ガン仮説です。いくつかの要因が重なり合って普通の細胞が徐々に癌化していくと考えられています。

癌発症の最初のステップは、細胞内の遺伝子が傷ついたことです。正常な細胞の遺伝子に2~10個程度の傷がつくと、異常な細胞分裂が始まるとされています。遺伝子が傷つくきっかけは、さまざまなものがあると考えられています。加齢、喫煙、過剰な飲酒、ストレス、栄養不足、睡眠不足、環境汚染、ウイルス感染など、さまざまな要因が長年にわたって蓄積することで、遺伝子は傷つくと考えられています。遺伝子が傷ついても、ただちに癌が進行するわけではありません。癌の増殖を抑制する遺伝子の存在も知られています。癌の増殖を促進する遺伝子と抑制する遺伝子のバランスが崩れた時、癌の増殖が進みます。細胞の増殖が異常に進み、腫瘍となり、腫瘍がさらに癌化します。異常に増殖した細胞は、本来の役割を果たしません。そのような細胞が広がることで、内臓などの組織が本来の機能を果たさなくなる状態が続き、異常を来すのが癌です。また、癌細胞は、正常な組織に必要な栄養を奪います。そのため、癌が進行すると、体が衰弱します。

癌に罹る人は、年々増加していると言われています。2008年の段階で、癌と新たに診断された人の数は80万人と報告されています。臓器に関わらず、癌細胞が1cmの大きさになるまでには5~10年かかると考えられています。長期間かけて癌は大きくなっていきます。定期的に検診を受けて早期に癌を発見するようにしたいものです。

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