食道がんの生存率はどのようになっているの?
癌は、ステージが同じでも、治療効果が出やすい癌と多くの治療効果を望めない癌があると言われています。治療効果は、生存率に直結します。癌では、治療を開始してから5年後に存命しているかどうかを考えた5年生存率がよく使われています。食道がんの5年生存率はどうなっているのでしょうか。
他の臓器への転移が見られないステージでの5年生存率が低め
生存率は、癌の進行度や治療内容別に算出しますが、患者の年齢や合併症の有無などの影響も受けます。そのため、算出した時の対象者によって、数値には多少のばらつきが出ます。そのようなばらつきを踏まえて数値を示すと、癌全般のステージごとの5年生存率は、ステージ1では約90%、ステージ2でも70~80%、ステージ3になると50%、ステージ4では9~10%とされています。
食道がんの場合、ステージ1で早くも5年生存率が平均を大きく下回っています。公益財団法人がん研究振興財団による「がんの統計 2011」によると、食道がんでは、ステージ1での5年生存率は67.4%です。リンパ節転移が見られるステージ2では、5年生存率は38.0%。食道から離れたところのリンパ節にも転移が見られるステージ3では、5年生存率は19.7%。ステージ4の5年生存率は9.1%とされています。他の臓器に転移が見られない段階での5年生存率が、食道がんでは低いことが分かります。
食道がんは進行が速い
癌がまだ粘膜内に留まっているステージ0の段階で治療を開始することができれば、食道がんでもほぼ100%完治させることができるとされています。健康診断や人間ドックの時に内視鏡検査などで喉にポリープが見つかったというケースも、20%近くあると言われています。そのような状態で発見された食道がんは、早期であることが多く、手術による治療効果が比較的高いようです。
食道がんは自覚症状が非常に乏しく、癌が進行した状態で見つかることが多いことが、生存率の低さに大きく影響していると言われています。加えて、進行が速いことも、食道がんの生存率を低くしているようです。食道には、漿膜(しょうまく)という外側の丈夫な膜がありません。そのため、癌が広がりやすいと考えられています。また、食道周辺にはリンパ節も多く、大動脈という太い血管も通っています。そのため、食道がんではリンパ節転移が起こりやすく、他の臓器に転移する場合、食道の周辺の臓器だけでなく、脳や副腎といった遠隔臓器にも転移することが稀ではありません。食道という臓器の特徴が、癌の進行を速め、生存率を低くしていると言えるでしょう。
早期からリンパ節転移が見られる食道がん
食道がんでは、リンパ節転移がどの範囲で見られるかということがステージを分ける目安の1つになっています。食道がんでも、ステージ4になると、癌細胞が血管内に侵入して他の臓器に転移しますが、ステージ3まではもっぱらリンパ節転移が見られます。食道がんではステージ1からすでにリンパ節転移が見られることもあります。ステージ1bと呼ばれる段階では、癌が発生した食道の部位の近くのリンパ節にわずかながら転移が見られます。リンパ節は、細菌やウイルスなどの人体に有害な物質が血液に侵入するのを防ぐ役割を担っています。食道がんでは、免疫抗体がつくられるリンパ節への転移が早期から見られます。食道がんの進行が速いこと、他の臓器への転移が見られないステージでの5年生存率がおしなべて低めなことと、早期からリンパ節転移が見られることとは、無関係ではないでしょう。
食道がんは、自覚症状が無いことが多く、症状が現れた時にはすでに癌が進行していると言われています。食道の周辺にはたくさんのリンパ節があり、食道がんでは早期からリンパ節転移が見られます。免疫抗体がつくられるリンパ節への転移が早期から見られるのが、食道がんの特徴です。進行が速く、他の臓器への転移が見られない段階での5年生存率が低めだということも、食道がんの特徴です。定期検診を積極的に受けて、早期発見に努めるとともに、多少とも自覚症状があったらすぐに病院を受診することが大切です。
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