アルツハイマーの原因と予防方法は？

現在、4人に1人が65歳以上という高齢社会です。高齢者に発症することが多いアルツハイマー病への関心が高まっています。アルツハイマー病は、かつては欧米人に多いと言われていました。しかし、食生活の欧米化が進み、検査技術も確立された今日、日本でもアルツハイマー病の患者は多いことが指摘されています。認知症患者の半数がアルツハイマー病です。アルツハイマー病の原因は何でしょうか。予防する方法はあるのでしょうか。

アルツハイマー病の原因は十分に分かってはいない

アルツハイマー病の原因は、まだ完全には解明されていません。遺伝、環境、生活習慣などの複数の因子が複雑に絡み合い、長期間かけて脳の中で変化が生じていると考えられています。 アルツハイマー病をめぐる大きな謎の一つは、この病気がなぜ高齢者に多く発症するのかということです。加齢が脳にどのような影響を及ぼすのか、脳の変化がニューロンにどのような害を与えてアルツハイマー病を引き起こすのかといった研究が現在も続いています。 また、アルツハイマー病の研究が進むにつれて、遺伝子が発症に重要な役割を果たしていることが分かってきています。アルツハイマー病の患者の約5%を占める若年性アルツハイマー病は、30代から60歳の人に発症しますが、ほとんどの症例で家族性が確認されています。そのことから、アルツハイマー病と遺伝子の関係を調べる研究が進められるようになりました。現在、アルツハイマー病の発症に関連があると考えられる3つの遺伝子について研究が行われています。 アルツハイマー病には、生活習慣との関連も指摘されています。血管および代謝に関する症状に大きな関心が集まっています。糖尿病や高血圧などの病気がある人は、そのような病気がない人に比べてアルツハイマー病に罹るリスクが高いことが明らかになっています。

軽度認知障害の段階なら予防が可能とも

アルツハイマー病を発症する10~20年以上も前から予兆が見られることが、近年の多くの研究で分かってきました。アルツハイマー病の前段階は、軽度認知障害と呼ばれています。軽度認知障害の段階で睡眠の質の改善を図り、軽い運動を頻繁に行うようにすると、アルツハイマー病の発症を予防する可能性が高いと言われています。 アルツハイマー病は、脳内にβアミロイドやタウと呼ばれるタンパク質が蓄積することで、脳細胞を死滅させ、脳が萎縮することで症状が引き起こされると言われています。良質な睡眠や適度な運動は、こうした異常なタンパク質の蓄積を防ぐとされています。

睡眠の質を高める

睡眠中、脳は老廃物の排出と回収を行います。不要なβアミロイドも、睡眠中に脳脊髄液の循環に伴って回収されます。睡眠不足になると、脳脊髄液の循環機能が低下してβアミロイドが蓄積されやすくなります。睡眠効率が悪い人は、アルツハイマー病を発症するリスクが5倍以上も高いとされています。 睡眠時間は、若い頃と同じでも、中高年になると、熟眠感があまり感じられなくなってきます。脳を休息させる深い眠りであるノンレム睡眠が減少してくるからです。20~30代と比べると、50歳以上では、ノンレム睡眠の時間は半分から3分の1程度に減少します。 睡眠の質を高めるには、日中の活動量を増やしましょう。ウォーキングなどの運動を一定時間続けたり、積極的に出掛けることも大切です。糖尿病や高血圧などがあると、睡眠が不十分になりがちです。生活習慣病を管理することも必要です。

適度な運動を続ける

運動をすると、βアミロイドを分解する酵素が活性化されることが報告されています。また、運動することで、筋肉細胞からイリシンというホルモンが放出されます。イリシンは、脳の細胞が死滅するのを抑制し、海馬の神経細胞を活性化する役割を果たすとされています。 多くの研究で推奨されている運動は、有酸素運動です。短時間でも毎日続けることが望ましいと言われています。運動しながら頭を使うようにすると、一層効果的です。ウォーキングをしながら、100から3を引き続ける計算をしたり、数人でウォーキングするなら一緒にしりとりをすると脳細胞を活性化する効果が高いと言われています。 アルツハイマー病には、加齢や遺伝子の影響が指摘されています。加齢や遺伝子といった危険因子を制御することはできませんが、睡眠の質を高めたり、適度な運動を続けることで、アルツハイマー病のリスクを低くすることはできます。

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