ミステリー界における犬神家の遺産

ミステリー小説のジャンルでは、遺産相続のことが盛り込まれている話に頻繁に出会います。中でも作品の質、人気を合わせ、国内の作品でその筆頭に挙げられるのが、横溝正史の代表作であり、繰り返し映画やテレビドラマ化もされている『犬神家の一族』です。

犬神家の遺産をめぐる物語

多額の財産を残して他界した大物

「犬神家の一族」は1950年1月から1年半にわたって雑誌に連載された作品です。
戦後間もない昭和20年代前半、那須湖畔の本宅で信州財界の大物・犬神佐兵衛が莫大な遺産を残して他界しました。
佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人、婿養子をとり、さらにそれぞれに息子が1人ずついましたが、お互いが反目し合っていました。

遺言状「珠世に全てをわたす!」

佐兵衛の遺言状は、弁護士によって探偵・金田一耕助の立ち会いのもとに公開されることになります。そこに書かれてあったのは「全相続権を示す犬神家の家宝“斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)”の三つを、野々宮珠世(佐兵衛の終世の恩人たる野々宮大弐の唯一の血縁、大弐の孫娘)に与えるが、珠世は佐清、佐武、佐智の佐兵衛の3人の孫息子の中から、配偶者を選ぶものとする」という内容でした。

連続殺人の幕開け

この遺言状によって3姉妹の仲はますます険悪となり、息子たちの間で珠世の愛を勝ち取るための争いが始まります。そのさなか、佐武が生首を「菊」人形として飾られて惨殺されるという事件が発生。犬神家の連続殺人の幕が開くのです。
 

映画化でさらに有名に

この作品を有名にしたのが、1976年に角川映画の記念すべき第1回作品として作られた映画です。名匠・市川崑監督がメガホンをとり、人気俳優・石坂浩二が主役の探偵・金田一耕助を演じました。
市川監督は、原作の持つ怪しい魅力を見事にビジュアル化。本と映画を連携させた大規模な宣伝も功を奏し、当時、一世を風靡しました。
 

ミステリー小説としての価値

横溝正史の名を高める

さまざまな因縁の絡み合い、複雑怪奇な人間関係、日本的な湿った暗い情念、遺言状に残された謎めいた暗号のような言葉、それを使った見立て殺人、巧妙なトリック…道具立ての一つ一つが不気味な魅力にあふれています。
それらから構築される独特の世界観は、作家・横溝正史の名を不動のものにし、日本のミステリー小説の古典の一つとして認められるようにもなりました。
 

「遺産相続もの」の誕生

もうひとつ、遺産相続・遺言というものを作品世界のど真ん中に据えた初めてのミステリー小説としての価値も大きいでしょう。
この作品をお手本にその後、次々と遺産・遺言状をテーマにした作品が書かれ、ミステリーの中でも「遺産相続もの」という一つのカテゴリーまで生まれました。
 

まとめ

遺産をめぐる人間ドラマの要素のすべてが詰まった「犬神家の一族」。この作品自体が、日本のミステリー界の大きな遺産になったと言っても過言ではないでしょう。
 

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