遺産分割協議書の基礎知識と書き方

遺産分割協議書を相続手続きのときに要求されることがありますが、なぜ必要なのか、どのようなものかお悩みではありませんか?

このページでは、遺産分割協議書についての目的、内容について解説します。これにより、遺産分割協議書を作るべきかどうか、その書き方、専門家に頼んだほうがよいかなどがわかります。

Contents

遺産分割協議書が要求される場面

遺産分割協議書ということばを聞いたことがない方、いらっしゃいませんか?

聞いたことがないといっても、相続が発生した場合には、必ずといっていいほど遺産分割協議書が必要となります。

どのような場面で必要となるかというと、不動産登記の移転手続きや預金名義の変更手続きなどです。以下詳しくみていきます。

不動産登記の移転手続き

不動産の名義を変更する場合は、その不動産近くの法務局で手続きをする必要があります。

この法務局での手続きでは、(登記)申請書の他に、「相続人間でちゃんと話し合って、誰が継ぐのか決めましたよ。」という証明のために、遺産分割協議書が必要になるのです。

これがないと、法務局側も誰がその不動産の権利者なのか判断がつかないからです。

なお、誰が権利者かという証明のためには、遺産分割協議書の他には遺言書も証明となります。

すなわち、通常は遺言書があった場合には遺言書を提出して名義変更手続きを申請しますが、遺言書がない場合、もしくは、遺言書を相続人全員で協議で否定してあらためて話し合いで決めた場合には、遺産分割協議書が必要になります。

預金名義の変更手続き

預金名義の書換え、預金の解約の場合も不動産登記名義の場合と同じです。

金融機関窓口にて「誰が権利者となるのか。相続人全員で納得したのか。」などを証明するために、遺産分割協議書が必要になります。

なお、金融機関窓口においては、遺産分割協議書のかわりに同意書で済ませることができます。

ただし、同意書は結局のところ預金に関する部分だけの遺産分割協議書と同じものであり、実印及び印鑑証明が求められます。

とするなら、はじめから遺産分割協議書を作成したほうがよいといえるでしょう。

このように、重要な財産の名義変更においては、遺産分割協議書が必要となるのです。

相続税申告手続き

相続税申告を行う場合においても遺産分割協議書が必要となります。

これは、どの相続人がどれほどの遺産を相続したかの決定が、相続税額の計算を左右するからです。

民法上の(法律上の)分割案ではなく、それぞれの協議で遺産相続額によって相続税額が代わるのです。

もともと、相続税は相続人個人にかかるものですから、当然といえば当然のお話になります。

遺産分割協議書は契約書のようなもの

上記のように遺産分割協議書は大変重要なものなのです。

各財産の権利関係を定めるわけですから、遺産の帰属をきめるものとして契約書と同様の効力があると考えてしかるべきでしょう。

ですから、その後の相続人間の話し合い結果も踏まえるとしっかりと協議したうえで、書類を作成し、保管をするべきと思います。

なお、印鑑には実印でなければなりません。すなわち、印鑑登録証明書も合わせて必要になるのです。実印かどうかは法務局での手続きや、預金名義変更手続きにおいて厳格に審査されます。

遺産分割協議書はほとんどの場面で作成する必要がある

遺産分割協議書は作成するのが、面倒でしょう。相続人全員が同意したことを書面で表すのですから、全員が納得しなければ作成ができないのです。

ですが、皆が納得できれば強力な効力が生じるものとなります。

この効力の重要性から、相続手続き全般において遺産分割協議書が求められることになるのです。

不要な場面は各種名義変更手続きが不要な場合+遺言書があって納得している場合

もっとも、各種相続手続きが不要だという場合には、遺産分割協議書は不要となります。遺産分割協議書は手続きに必要だから作成するということが一般的です。

また、遺言書があって、どの相続人も納得している場合には、遺言書が財産の帰属を表すことになりますから、不要となります。

さらには、相続人が一人っ子という場合も遺産分割協議書は不要といえます。相続人が一人しかおらず、財産の帰属が決まってしまっているからです。

この他に、以下のような場合に作成しないということがあります。

遺産分割協議書は全員の署名捺印(実印による印鑑)が必要となっていますが、相続人が多く、近くにいない場合には実印による印鑑をもらうことが大変手間になってしまいます。

そこで、相続人のみなさんからそれぞれ実印をもらって、遺産分割協議書に似た効力をもつ証明書を作成した場合です。この証明書を遺産分割証明書といいます。

一通ずつ作成して、各相続人にその証明書に署名捺印をしてもらうことで、遺産分割協議書を作成したのと同じような体裁になります。

相続人が遠方にいる場合には便利なものですね。

ただし、この文面についてはいくつか注意点がありますので、詳しくは専門家にお聞きするのがよろしいと思います。

遺産分割協議書のまとめ

以上のように遺産分割協議書は遺言書がある場合やそれに代わる遺産分割証明書などがある場合、相続人が一人の場合をのぞいて、必要になるのです。

相続が発生したさ真っ先に遺産分割協議書について検討すべきでしょう。

遺産分割協議でやってはいけないこと

ここで、遺産分割協議書にまつわる相談で、気になる点をあげます。

他の相続人から、実印と印鑑証明の提出を求められたとき

他の相続人から実印と印鑑証明を預かりたいと言われたときの対応についてよくご相談いただきます。

これについては、どんなに信頼をしている兄弟でも、親戚でも渡すのはやめましょう。

「すべて任せてほしい」と言われたとしても、どのような遺産分割協議書が作られているのか報告もないまま、渡すのは後々もっとももめるケースとなります。

信頼できる人であれば、本来なら協議書を説明して署名捺印をもらうことになるでしょう。

それがないのは信頼するのは難しいという証にもなってしまいます。

極めて重要なことですので、毎回お話しています。

強引に遺産分割を進める

遺産分割協議書を主体的に主導して作成する相続人の方に対しては、しっかり話あって決めてくださいとよく申し上げます。

強引にすすめてしまって、あとで他の相続人との間の協議でもめてしまうと、その後の相続人間の信頼関係が壊れてしまい、ほぼ一生付き合えなくなってしまうこともあるのです。

遺産分割協議を主導するにしても、よく他の相続人の方の意見を聞きながら、円満に解決されることをおすすめします。

遺産分割協議書の書き方

必要な書類を集める

遺産分割協議書を作成する際には、以下のような書類が必要になります。

必要書類

取得できる機関

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等

本籍地のある役場

法定相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

上に同じ

不動産全部事項証明書(登記簿)

法務局

亡くなった方の預金通帳

ない場合には、各金融機関に問い合わせる必要がある

印鑑登録証明書

相続人の住民票のある役所

 

これらは、遺産分割協議書を作成する上で最低限必要なものとお考えください。

遺産分割協議書には相続財産をすべて正確に記載する必要があります。

ですから、その根拠となる資料をすべてそろえておくのがよいでしょう。

上から順に見ていきます。

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等

 「相続人はわかっているからいらないのでは!」と思われる方も多くいらっしゃると思います。

しかし、亡くなられた方がどこかで再婚していなかったかとか、養子縁組をしていなかったかなどは、戸籍をすべてとって初めて証明できるものです。

 また、この書類については、不動産名義の移転の手続きの際に、法務局から求められるものでもあります。ですから、とっておいて損はありません。

 

・法定相続人の戸籍謄本

 これは、被相続人との関係を証明するために必要となります。相続人かどうかは本人や周りはわかっているのかもしれませんが、実は違ってたということもあります。また、出生から死亡までの戸籍謄本等と同様に、役所から提出を求められるのです。

 ですから、用意したうえで、この戸籍謄本にもとづいて相続人の部分の記載をすることをおすすめします。

 

・不動産全部事項証明書(登記簿)

 これは、不動産の正確な情報を確認するために必要になります。不動産の特定は全部事項証明書に記載されている情報をもとにおこないます。法務局においてもこの情報をもとに権利関係を確認すのです。

 

・亡くなった方の預金通帳

 預金については、銀行名、支店名、普通・当座、口座番号で預金を特定できます。これらの正確な情報が必要になりますので、通帳も準備しましょう。

 

・印鑑登録証明書

 これは、実印の印鑑かを確認するために準備しましょう。各種、手続きの際には、遺産分割協議書のほか、実印が利用されているわけですから、印鑑登録証明書も提出を求められます。

 また、この書面は役所などで発行されるので、現住所が記載されています。ですから、相続人の住所の記載はこの書類に記録されている住所を記載しましょう。

 

相続人間で遺産分割に関する協議を行う

遺産分割協議書はその名前からして遺産分割協議が前提になります。

ですから、原則として遺産分割協議を行うことをおすすめいたします。相続人の皆さんで話し合って方向を決めることはとても大事です。

あとで、書面を回して署名捺印を求めるだけを行う方もいらっしゃるかと思いますが、この方法が場合によっては揉める原因となることが多いのです。「聞いてない」「勝手に決められては困る」という反応がありえるのです。

面倒ではありますが、電話でも結構です。相続人間でコミュニケーションを図り、信頼関係をしっかりと作っておきましょう。

このことは、遺産分割協議書が契約書のようなものと考えるとすんなりとわかります。相手とロクに話さないで、契約書を作られたらだれも契約しないことと同じなのです。

協議の方向性がまとまったら、直筆またはWordなどで作成をする(雛形はこのページ記載されています)

 ある程度、相続の方向性が定まりましたら、遺産分割協議書の案を作成します。案を作成しておかないと、他の相続人の皆さんにイメージが浮かびませんので、遺産分割協議の前提としてやはり必要になると思います。

 遺産分割協議書案ですが、手書きでも構いませんが、基本的にはパソコンで作成していただきたいです。あとで、修正等が入りますから、下書き段階はWordなどで作成します。

協議がまとまったら、Wordで作成した文書に全相続人で署名捺印を押す

 遺産分割協議の際には、遺産分割案を相続人分コピーしてお持ちします。

 協議では以下のような手順で行うのが良いでしょう。

  ①あいさつ、故人への思いなどを少し触れる

  ②遺産分割協議書案を読み上げる

  ③遺産分割協議書案に対して、誤植がないか、内容についての質問、確認などを行う。

  ④とくに問題がなければ、実印で署名捺印をする。

なお、遠方の方に対しては、代表者が電話で内容を伝えて、遺産分割協議書を送付し、署名捺印後送付してもらうようにします。

遺産分割協議書の書き方の注意点 契印と割印、捨印について

複数ページに渡る場合に必要な契印

遺産分割協議書がA4一枚またはA3一枚に収まるなら特に問題はありませんが、複数枚になる場合には、すべて合わせて遺産分割協議書といえます。

そこで、それを表すためにページとページの間に印鑑を押すことがあります。これを契印といいます。なお、最近は、ホチキス止めした後にその上から製本テープを貼り、その上から印鑑を押すということもあります。

なお、印鑑は署名捺印をした全員分の印鑑が必要になります。

複数通作成する場合に必要な割印

遺産分割協議書は通常、相続人分作成することが多くあります。相続人それぞれが当事者である契約書の意味を持って保管される場合がありますね。

その際ですが、契約書本体なのか、たんなるコピーなのかわからなくなってしまいますから、割り印を押して、押されたものはすべて原本であるということにするのです。

具体的には、2部作成する場合には、その2部を重ねたうえで重ねたところに印鑑をおします。

なお、契印と同じく印鑑は署名捺印をした全員分の印鑑が必要になります。

文面の修正を簡単にするために必要な捨印

各ページの中に印鑑が押されていることは見たことはありませんか?

これは、捨印というものです。

通常文言の修正には、修正の度に印鑑が必要ですが、いちいち他の相続人に訂正印を押してもらうのは大変です。そこで、捨印を一箇所に押すことでいつでも訂正ができるようになるのです。

ただし、押してしまうとどんな修正でもできるわけですから、この捨印には注意が必要です。

その後の手続き

 遺産分割協議書が求められる手続きとしては、不動産名義書換え、預金口座の名義書換え(口座を閉じることもある)、相続税申告手続きが代表的な例になります。

 法務局、金融機関、税務署のそれぞれの窓口に出向いて遺産分割協議書及びその他の必要書類を提出します。

 なお、それぞれの手続きについては、別の記事でご紹介いたします。

遺産分割協議書の雛形

不動産がある場合

 

遺産分割協議書

被相続人鈴木太郎(昭和20年7月19日生)の平成27年11月16日死亡により開始した相続の共同相続人である鈴木一郎、鈴木二郎の間で次の通り遺産分割の協議をした。

1 鈴木一郎は以下の財産を相続する。

(土地)

 所在 東京都●●区●●町

 地番 ●番●

 地目 宅地

 地積 200㎡

(建物)

 所在 東京都●●区●●町●番地●

 家屋番号 ●番●

 種類 居宅

 構造 木造瓦葺平家建

 床面積 200㎡

以上

本遺産分割協議の成立を証するため、本協議書は2通作成し、各自が各1通ずつ保有する。

平成27年12月16日

東京都●●区●●町●ー●-●

鈴木 一郎 印

東京都●●区●●町●ー●ー●

鈴木 二郎 印

 

預貯金や現金がある場合

 

遺産分割協議書

被相続人鈴木太郎(昭和20年7月19日生)の平成27年11月16日死亡により開始した相続の共同相続人である鈴木一郎、鈴木二郎の間で次の通り遺産分割の協議をした。

1 次の預金について、鈴木一郎と鈴木二郎が2分の1ずつ取得する。

  □□銀行□□支店 普通預金 口座番号 234567

   相続開始日の残高  金 2400万円

2 次の現金について、鈴木一郎と鈴木二郎が2分の1ずつ取得する。

   金 3500円

3 本遺産分割協議書に記載されていない遺産、及び後日新たに判明した遺産は鈴木二郎が相続する。

4 本件遺産分割協議書に署名捺印した相続人は、相互に、本件遺産相続に関して本遺産分割協議書に定めるもののほかに何の債権債務を有しないことを相互に確認した。

以上

本遺産分割協議の成立を証するため、本協議書は2通作成し、各自が各1通ずつ保有する。

平成27年12月16日

東京都●●区●●町●ー●-●

鈴木 一郎 印

東京都●●区●●町●ー●ー●

鈴木 二郎 印

 

 

借金の分担がある場合

 

遺産分割協議書

被相続人鈴木太郎(昭和20年7月19日生)の平成27年11月16日死亡により開始した相続の共同相続人である鈴木一郎、鈴木二郎の間で次の通り遺産分割の協議をした。

1 次の預金について、鈴木一郎と鈴木二郎が2分の1ずつ取得する。

  □□銀行□□支店 普通預金 口座番号 234567

   相続開始日の残高  金 2400万円

2 次の借入金については、鈴木二郎が取得する。

3 本遺産分割協議書に記載されていない遺産、及び後日新たに判明した遺産は鈴木二郎が相続する。

4 本件遺産分割協議書に署名捺印した相続人は、相互に、本件遺産相続に関して本遺産分割協議書に定めるもののほかに何の債権債務を有しないことを相互に確認した。

以上

本遺産分割協議の成立を証するため、本協議書は2通作成し、各自が各1通ずつ保有する。

平成27年12月16日

東京都●●区●●町●ー●-●

鈴木 一郎 印

東京都●●区●●町●ー●ー●

鈴木 二郎 印

 

負担部分がある場合ですが、借入金については相続人間で案分して相続するのが判例上決まっています。
ですから、特定の人が相続するという規定を設けたとしても、あくまで相続人間で誰が負担するかというだけの問題になります。

遺産分割協議書通りに分割するには、債権者の同意が必要となります。

なお、相続後発生した葬式費用、各種手続き費用などは、相続財産からまずは支払われ、残りを相続人間で分割することになります。

 

代償分割がある場合

 

代償分割とは、不動産などの財産について、共有にしたり売却したお金を分けるのではなく、特定の相続人が相続し、他の相続人に代償金を支払うとする分割の方法です。

遺産分割協議書

被相続人鈴木一郎(昭和20年7月19日生)の平成27年11月16日死亡により開始した相続の共同相続人である鈴木一郎、鈴木二郎の間で次の通り遺産分割の協議をした。

1、 鈴木一郎は以下の財産を相続する。

所在 東京都●●区●●町

地番 ●番●

地目 宅地

地積 200㎡

所在 東京都●●区●●町●番地●

家屋番号 ●番●

種類 居宅

構造 木造瓦葺平家建

床面積 200㎡

2.鈴木一郎は、第一項に記載の遺産を取得する代償として、鈴木二郎に対し、金1

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