キリスト教の葬儀はどんなもの?知っておきたい基本知識

日本の葬儀の多くは仏教のしきたりに則って執り行われますが、仏教以外の宗教を信仰している人たちは、当然自らが信ずる宗教に則った葬儀を行うことになります。仏教や神道以外の宗教で最もメジャーなものの1つが「キリスト教」です。日本では概ね対人口比で1%前後、つまり100万人前後の信者がいると言われています。そこでここでは意外と知られていないキリスト教の葬儀の基礎知識や流れについてご紹介します。

キリスト教における葬儀の意義

仏教とキリスト教では、そもそも葬儀に対する考え方が大きく異なります。大ざっぱに言うと仏教の葬儀は「故人を偲ぶ」という点に重きが置かれていますが、キリスト教では「神様に罪を許していただく」という意味合いが強いです。その他に細かい点では以下のような違いがあります。

死は「終わり」ではなく「始まり」

キリスト教では、死を「命の終わり」ではなく「永遠の安息の始まり」と捉えます。地上での様々な罪を天上界の神様に許していただき、神様の下へ召され、やがて訪れる「復活の日」まで天国で過ごす、という考え方です。そのため亡くなることを「天に召される(召天)」「天に帰られる(帰天)」と表現したりもしますし、死そのものを「祝福すべきこと」と位置づけます。

葬儀は神様への礼拝が目的

仏教における葬儀の目的は、端的に言えば「授戒」と「成仏」です。すなわち故人が仏門に入るための戒律を僧侶が授け、やがては極楽浄土という安らかなる場所へ生まれ変わることを祈るわけです。それに対してキリスト教の葬儀の目的は、あらゆる者の創造主たる神様に深い感謝を捧げ、故人を神様の下へ送り出すためのものです。

聖歌や讃美歌と献花によって故人を天国へと送る

仏式の葬儀では参列者がお焼香をすることによって故人の冥福を祈りますが、キリスト教の葬儀では参列者が献花を行います。ただし献花の目的はあくまでも「遺体や柩を飾るため」であり、お焼香とは意味が異なります。キリスト教において「捧げもの」はあくまでも神様(主)に対して行うものであって、人に対して行うものではないからです。また、キリスト教の葬儀にはカトリックでは神父、プロテスタントでは牧師が立ち合いますが、仏教の葬儀における僧侶の読経のようなものはありません。その代わり、というわけではないですが、参列者全員でカトリックでは聖歌、プロテスタントでは讃美歌を歌います。

キリスト教における葬儀の流れ

キリスト教には「カトリック」「プロテスタント」という二大宗派が存在します。一般的にカトリックは伝統的な儀式に対して非常に厳格、プロテスタントはカトリックに比べるとある程度自由で柔軟、と言われていますが、これは葬儀においても同じことが言えます。以下に葬儀の流れをカトリック、プロテスタントそれぞれに見てみましょう。

臨終直前もしくは直後

キリスト教においては葬儀そのものよりも「どのように臨終を迎えるか」の方が重要とされています。そのため臨終前のまだ意識があるうちにカトリックなら神父、プロテスタントなら牧師を呼び儀式を始めることになります。カトリックではまず最初に「病者の塗油」という儀式が行われます。これは病者の額に手を置き、顔と両手に聖油で十字架を記して病気からの回復や生きている間に犯した罪からの解放を祈るためのものです。なお、プロテスタントにはこれに相当する儀式はありません。続いてカトリックで行われるのが「聖体拝領」という儀式です。「聖体」とはキリストの血肉を指しますが、代用として神父が教会から持参したパンと赤ワインが使われます。これらを故人の口につけます。仏教や神道における「末期の水」と同じような意味合いを持ちます。プロテスタントでも牧師によって同じような儀式が行われますが、こちらは「聖餐式」という儀式となります。以上の儀式は臨終直前に行われるのが望ましいですが、その前に亡くなってしまった場合は臨終直後に行われます。

遺体の搬出と安置について

キリスト教では原則として葬儀は故人が洗礼を受けた教会や自宅を管轄する教会で行うことになります。病院で亡くなった場合は一旦自宅に遺体を安置し、その後の「納棺式」とカトリックの場合は「通夜祭」、プロテスタントの場合は「前夜祭」を行います。ただし近年の日本では仏式同様に葬祭業者や地方自治体の斎場(セレモニーホール)で葬儀を行うことも多いのが実情です。その場合は病院から直接自宅に遺体を搬送し、全ての儀式を斎場で行うことになります。

納棺式

納棺式自体はカトリックもプロテスタントも行いますが、細部が異なっています。まずカトリックの場合、神父の導きにより神様にお祈りを捧げ、聖書朗読、聖歌斉唱をします。ここで神父が聖水を遺体に撒きます。聖水とは神父が祈祷して清めた「聖化された水」のことです。続いて遺体を遺族・親族の手で柩に納めます。この時故人の手は胸の上で組み、十字架とロザリオを置きます。そして遺体の周囲を花で飾ります。最後に柩に蓋をして黒い布を被せ、白い花で作った十字架を柩の上にのせます。柩を閉じた後は再度神父のお祈り、挨拶、聖歌斉唱、全員でのお祈りをして、神父、遺族、親族、一般会葬者の順に撒水をして納棺式は終了です。プロテスタントの場合は牧師が開式を告げた後、聖書朗読とお祈りが捧げられ、遺体を遺族・親族の手で柩に納めます。その際遺体は白い花で包み、白いガウンを被せて柩に蓋をします。柩の蓋は釘打ちせずに黒い布を被せ、白い花で作った十字架を柩の上にのせます。柩を閉じた後は全員で讃美歌を合唱し、牧師が故人や信仰にまつわる話しをし、納棺にあたって神様への謝辞を述べます。その後再度讃美歌を全員で合唱し、お祈りを捧げて納棺式は終了です。

通夜祭・前夜祭

仏教の葬儀では「通夜の翌日に葬儀・告別式、火葬」という流れになりますが、キリスト教でも仏教と同じように2日間に渡って葬儀を行います。仏教における通夜式に相当するものがカトリックの「通夜祭」であり、プロテスタントの「前夜祭」です。ただしいずれも仏教の通夜式ほど決まった形式があるものではありません。どちらも納棺式の当日夜、もしくは翌日夜に行います。カトリックの通夜祭もプロテスタントの前夜祭も、内容的に大きな差はありません。神父や牧師、参列者が神様にお祈りを捧げ、聖書を朗読し、カトリックは聖歌、プロテスタントは讃美歌を斉唱します。大きな違いはカトリックの通夜祭では聖水を撒く儀式、つまり撒水が行われるという点です。仏教の通夜式ではいわゆる「通夜振る舞い」として料理や酒を出しますが、通夜祭や前夜祭ではこのような習慣は原則としてありません。ただし場合によっては故人の思い出話をしながら軽食を食べたりすることもあります。

出棺式

納棺式と通夜祭、前夜祭までを自宅で行った場合、以降の儀式は教会で行うことになります。そのため通夜祭の翌日に出棺式を行い柩を教会へ運びます。斎場で行った場合、葬儀が全て終了してから火葬場に向かう前に出棺式を行う、という場合もあります。出棺式の内容自体にカトリックとプロテスタントの違いはあまりありません。

葬儀

通夜祭、前夜祭の翌日に行われる葬儀はカトリックとプロテスタントでは大きく異なります。

カトリックの場合、葬儀は「入堂式」「ミサ聖祭式」「赦祷式」の3つに厳格に分かれています。入堂式とはいわばこれから始まる儀式のための「開式の言葉」を神父が述べる、というものです。引き続いて行われる「ミサ聖祭式」がカトリックの葬儀においては最も重要な儀式となります。神父が従者と共に「ミサの祈り」を唱え、参列者も唱和して神様への感謝と故人の安息を祈ります。「ミサ聖祭式」では参列者による故人への聖体拝領も行われますが、これはカトリックの信者でない人は参加することは出来ません。その後の「赦祷式」も「ミサ聖祭式」と並んで重要な儀式とされており、ここでは柩へ聖水を撒水したり、香炉の煙の撒香したりすることで神様に対して故人の犯した生前の罪への許しを請い、神様の下へ召天して永遠の安息が得られるように祈ります。

一方のプロテスタントの場合、葬儀に厳格な儀式はありません。内容や順序はある程度自由に決めることが出来ます。カトリックとの大きな違いは仏教で言うところの告別式のような内容が含まれている、ということです。すなわち故人の略歴や弔電の披露がされたり、有志による弔辞の朗読、遺族による挨拶、参列者による献花などが行われます。カトリックの正式な儀式の中に告別式はありませんので、日本人にとってはどちらかと言えばプロテスタントの葬儀の方がなじみやすい、と言えるかもしれません。カトリックでも教会や神父の許可を得れば告別式を行うことも可能で実際にそのようなケースも増えてはいますが、断られることも多いようです。

火葬と埋葬

教会での儀式が全て終了したらその後火葬場へ向かい火葬式、ということになります。これは仏教の葬儀と同じです。キリスト教は土葬が原則ですが、日本では多くの自治体が土葬を禁じていることから火葬にするのが一般的です。火葬場では火葬炉の前で神父によるお祈り、聖歌斉唱、聖句交唱、(カトリックの場合は)撒水、撒香などを行います。仏教では火葬後に「お骨上げ」と言って2人1組で骨を拾って骨壺に納める儀式がありますが、キリスト教でこのような儀式はありません。参列者が分担してお骨を骨壺に納め、終了となります。

キリスト教の葬儀に参列する際の注意点

服装

服装は仏式の葬儀に参列する時と同じと考えておいて大丈夫です。男性はブラックフォーマルかダーク系のスーツ、女性はブラックフォーマルかダーク系のワンピースやアンサンブル、スーツということです。アクセサリー類は結婚指輪以外のものは外します(女性の真珠の一連ネックレスのみ例外)。

香典

キリスト教ではお香を焚く文化がないため、香典という言葉は使いません。その代わりに「御花料」という名目でお金を包みます。相場は香典と同じように考えておけばよいでしょう。

献花のマナー

仏式におけるお焼香のように、キリスト教では祭壇に白い菊やカーネーションを献花します。係の人から花を渡されたら花が右手側に来る形で両手で受け取り、祭壇の前で一礼をしてから祭壇側に根元が向くように時計回りで90度回転させます。左手の甲を下に向けた状態で右手は軽く茎の下に添え、献花台に献花をし、遺族や神父(牧師)に一礼をして自分の席に戻ります。

聖歌と讃美歌

聖歌や讃美歌は絶対に歌わなくてはいけないというものではありません。聴いているだけでも失礼にはあたりませんが、事前に歌の歌詞や祈りの言葉が書かれた紙を配られた時はなるべく参加するように心がけましょう。

お悔みの言葉

冒頭にも触れたように、キリスト教における死は「永遠の安息への始まり」とされ、祝福すべきこととして捉えられています。故人が亡くなったこと自体は悲しいことですが、決して不幸なことではない、ということになります。そのため仏式の葬儀で述べるような「お悔みの言葉」は不要です。 もしも遺族に言葉をかけるなら、故人の安らかな眠りを祈るような内容にした方が良いでしょう。

まとめ

キリスト教の葬儀は仏式の葬儀に比べると様々な点で異なりますが、参列する方にとってはあまり大きな違いはなく、難しいことはありません。それぞれの儀式の目的をよく理解し、心を込めて葬儀に参列したいものです。

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