落語家等による相続税脱税事件で逮捕!その手口とは?

和歌山県内の社会福祉法人への寄付を装い、4億9,500万円を脱税したとして、大阪府在住の不動産管理業社長や友人の落語家、税理士、社会福祉法人元理事ら7人が逮捕されました。 10億5,000万円の相続財産のうち、8億5,000万円を社会福祉法人に寄付(遺贈)したようにみせかけ、残り2億円だけを相続したとして、脱税が行われたようです。どのようなからくりだったのか解説いたします。

脱税のからくり

10億5,000万円を普通に相続すると相続税は5億円

10億5,000万円の財産を一人が相続すると、相続税の税率は55%ほどなので相続税の金額は5億550万円になります。
相続財産の約半分が相続税として納付しなければならない状況で、確かにショッキングな金額です。
 

社会福祉法人に遺贈すると相続税はかからない

通常、相続時に第三者に財産を渡すことを遺贈といいます。
遺贈を受けた場合にも相続税はかかります。
しかも、通常の2割増しで相続税がかかるのです。

ところが、社会福祉法人などの特定法人に対して財産をあげると非課税になるという制度があります。
今回はこの制度が悪用されました。
 

4億9,500万円の脱税のカラクリ

報道されている脱税額は4億9,500万円とされています。
そのカラクリをお伝えいたします。
 

脱税方法

  • 全財産は10億5,000万円
  • そのうち8億5,000万円は社会福祉法人へ遺贈したとして、相続税がかからないと嘘の申告をした
  • のこりの2億円についての相続税6,300万円を支払った

正しくは、
全財産10億5,000万円についての相続税5億550万円を支払うべきでした

差額は5億550万円-6,300万円=4億4,250万円

報道されている4億9,500万円とは若干の差額があります。
(詳細は今後の捜査内容が明らかにされ次第、検証してお伝えいたします。)

現時点では、脱税をした容疑者はこの社会福祉法人への遺贈として一旦財産をあげたとみせかけ、その遺贈した金額分に対する相続税の申告を免れようとした推測されます。
 

遺言書がなかったので偽造してしまった

ただし、上記遺贈を認めるためには、遺言書が必要です。
今回は、被相続人に遺言書がなかったのです。

そこで、なんと、遺言書を偽造したようです。

遺言書の偽造は私文書偽造罪という犯罪にあたります。
脱税目的で遺言書の偽造というのは、犯罪としてはかなり重いことになります。
 

もし、相続対策していたら防げた事件

10億5,000万円という財産を相続されたら、5億円の相続税を支払うことになるとは、理不尽に思えるかもしれません。
被相続人が亡くなる前に十分に相続対策(生前での相続税対策、財産の処遇、手続の方法など)をしたうえで、遺言書を残していたら、脱税に手を染めるようなことを防げたかもしれません。

脱税という犯罪行為に走らないためにも、相続のことについては、事前に対策をしておくことが大切だということがわかる事件ではないでしょうか。
 

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