遺留分減殺請求の手引き【保存版】|遺留分減殺請求に関する疑問を全て解説!
遺留分の権利が認められたとしても、どのようにそれを実行するのかわからない方も多くいらっしゃると思います。
実行のことを遺留分減殺請求といいます。
たまにこのことを“いりゅうぶんげんさつせいきゅう”と読む方もいらっしゃいますが、正確には“いりゅうぶんげんさいせいきゅう”と読みます。
“殺”という文字を“さつ”ではなく“さい”と読むところが注意です。
ここではこの遺留分減殺請求についてまとめてお伝えいたします。
遺留分減殺請求の概要
遺留分減殺請求は、遺留分が認められる相続人が遺贈を受けた者や贈与を受けた者に対して、一定限度の相続分を請求できる権利です。
もともと、配偶者や親(直系尊属)子供(直系卑属)には、相続財産の一部をもらう権利があります。
これを遺留分といいます。
ですから、被相続人がすべての相続財産を第三者に遺贈すると遺言書に記載したとしても、配偶者や直系尊属、直系卑属については、相続財産の一部を取り戻す権利があるのです。
この取り戻す権利を行使することを遺留分減殺請求といいます。
この遺留分減殺請求は、行使されると遺贈及び贈与を無効にすることができ、相続財産への権利が発生します。
ですから、遺贈や贈与がなされていた場合にはその相続財産についての返還請求(または共有物分割請求)などができるといわれています。
この点において、遺産分割協議があらためて必要ということはなさそうです(最高裁判例 平成8年1月26日が特定遺贈、全部包括遺贈について判示しました)。
遺留分減殺請求は相続開始を知ってから1年以内に行う
遺留分減殺請求は相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅してしまいます。
ただし、実際には贈与又は遺贈の事実だけでなく、遺留分を侵害するものであることも必要とされています。
もし、遺留分権利者が遺言を無効と考えていた場合には、どうなるのでしょう?
遺言が無効だから、遺留分ではなく本来の相続上の権利があると考えていると思いますがそれでも一年でなくなるのでしょうか?
裁判例では、事実上及び法律上の根拠があって遺留分権利者が無効を信じているために遺留分権を行使しなかったのが相当といえる特段の事情がない限り、「知った」と推認するのが相当であるとしています。
つまり、遺言が無効だと信じるよっぽどの理由がないと、1年で時効消滅してしまうということのようです。
なお、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知らなかったとしても、相続開始の時から10年で消滅してしまいます。これは除斥期間といわれ、時効とは異なり何がなんでも消滅してしまいます。
遺留分減殺請求の手続き
遺留分減殺請求の手続きは、まず内容証明郵便で「請求権を行使します」という書類を送ります。
通常は、これで相続の財産に対して権利が発生します。
内容証明郵便による通知はとても簡単にできます。
ですから、相続開始を知って1年になりそうな場合には、まずはこの通知を行いましょう。
これで、1年以内での実行は完了になります。
ただし、遺贈を受けた第三者が登記の移転に応じないなどの場合には、遺留分減殺に物件返還請求の訴訟を起こしたりします。
以下、それぞれの手続きについて詳しくみていきます。
【参考記事】
遺留分減殺請求権とは?手続き方法を解説
遺留分減殺請求の期限はいつまでか
遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺請求は、文書での通知で行います。
単に文書での通知を行うと「そもそもそのような文書は届いていない。請求がなかったので時効だ」と主張される可能性があるので、文書での通知は配達証明付き内容証明を利用するのが一般的です。
内容証明郵便は「どのような内容の文書を誰から誰に送ったか」を証明して、配達証明はその到着の日時について証明をしてくれることになるからです。
内容証明の書式については郵便局のホームページで作り方を参照してください。
遺留分減殺請求権の書式
遺留分減殺請求を行うときの内容証明郵便の文面は以下のようなものになります。
通知人 東京都新宿区神楽坂3-1-15-502 神楽坂 未来 被通知人 ○○県○○市○○2-1-3 ○○ ○○
遺留分減殺請求通知書
通知人は被相続人である○○○○がすべての財産を被通知人に 相続させる旨の遺言書を残したことを知りましたが、通知人には 遺留分が○分の1のあり、被通知人はこれを侵害しております。 つきましては、通知人は被通知人に対して、本書面をもって 遺留分減殺請求権の行使をささていただきます。 以 上 |
内容証明郵便を送るときには、同じものを3通準備しましょう。
1通目は、そのまま送付用。2通目は、郵便局で保管。3通目は謄本として手元に保管します。
以上のほかに、封筒の差出人と受取人は内容証明本文の通知人と被通知人が同じになるように間違わないようにしましょう。
郵便局窓口では内容証明はもれなく書留となりますので、書留郵便の備え付けの用紙に記載をします。
「配達証明はつけますか?」と聞かれますので、必ずつけるようにしてもらってください。
なお、内容証明郵便は行政書士、司法書士、弁護士などに依頼することもできます。
【参考記事】
遺留分減殺請求の方法・書式
遺留分減殺請求の内容証明の書き方(書式付き)
遺留分減殺請求による物件返還請求調停
遺留分減殺請求を行ったとしても、相手が、登記の移転に応じてくれないなど問題が発生することがあります。
そのようなときは、裁判の調停に出向いて解決する必要がでてきます。
この調停のことを「遺留分減殺による物件返還請求調停」といいます。
調停とは、お互いの話を裁判官1名と専門家2名からなる調停委員という組織が交互に聞き、どのようにトラブルになっているのか詳しく調べた上で、お互いの譲歩案を出して、それに両者が納得するかどうか決めるという制度です。
話し合いの延長なのですが、専門家が妥協案を提示してくれる点で、トラブルの解決に一役買います。
なお、調停には、以下のような書類が必要になります。
- 申立書
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 不動産がある場合には不動産登記事項証明書
- 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
- 相続人が父母の場合で,父母の一方が死亡しているときは,その死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人が祖父母,曾祖父母の場合は,他に死亡している直系尊属(ただし,相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:祖母が相続人である場合,祖父と父母)がいらっしゃる場合は,その直系尊属死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
費用は1200円分の収入印紙と連絡用の切手代になります。
なお、この他に弁護士に頼む場合には報酬がかかります。
一般に1000万を超えるようであれば、30万円程度の着手金はかかってくると考えて、弁護士と相談してみることをお勧めいたします。
調停がスムーズに行く場合には、調停調書というものが作成されます。
この調停調書は、相手が実行に協力してくれない場合には、この調書でもって不動産登記の名義変更ができたりしますので、強制力があります。
【参考記事】
遺留分減殺請求訴訟
調停が失敗に終わった場合には、遺留分減殺請求訴訟を提起します。
ただし、請求額に応じて訴訟を提起する裁判所は異なります。
請求額が140万円を超える場合には、地方裁判所に、
請求額が140万円以下の場合には、簡易裁判所に提起します。
なお、訴訟の途中であっても、裁判官から和解をするように勧められます。
和解に応じるならば判決と同じ効力で強制執行が可能になりますが、それ以上は争えなくなってしまいます。
遺留分減殺請求の訴訟も裁判所が判決をするまでの確信を得られる証拠を出し尽くしたときには、結審となって判決が提示されます。
判決が出てから2週間で判決は確定しますが、不服のある側が控訴をすれば、裁判は上級の裁判所で再度審理をされることになります。
【参考記事】
遺留分減殺請求訴訟の進め方
弁護士費用の目安
弁護士費用はあくまで目安としてご判断ください。
詳しくは、弁護士にお問い合わせください。
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