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農地の相続税評価について

相続税計算 2015年10月30日 閲覧数:5573

農地の相続税法上の評価額の算定は農地の種類によって大きく評価方法が変わります。なので、まずは大きく農地の種類についてみてみましょう。

相続税法上の評価方法による農地の種類とその評価方法(財産評価基本通達34から36-4)

  • 純農地・・・倍率方式
  • 中間農地・・・倍率方式
  • 市街地周辺農地・・・市街地周辺農地とした場合の価額×0.8
  • 市街地農地・・・倍率方式または宅地比準方式

 

農地法について

財産評価基本通達の話からちょっと離れます。
農地法は戦後の農地改革の思想から農地の所有・耕作・経営がいったいとなった農家による自作農主義に立脚し、耕作者の農地取得の促進及び権利保護による耕作者の地位の安全を主眼とする法律です。具体的には、本来自由であるはずの農地の移転、権利設定、または転用(農地以外のものにすること)を許可制とし、規制することにしています。

もっとも、近年産業構造や人口動態の変化により農業人口の高齢化及び減少による耕作放棄地の増加、食料自給率の減少等の課題が生じています。そこで、旧農地法の自作農主義を緩和し、農地の保護、農地を効率的に利用する耕作者に夜地域との調和に配慮した権利取得の促進等を新たに法の目的としました(平成21年改正)。

①農地法では他人に譲渡したり貸したりする場合(農地法3条)、②自分が所有する農地を自分が使用する目的で転用する場合(例えば田んぼを宅地にするような場合(農地法4条))、③農地の転用を目的として農地を他人に譲渡したり貸したりする場合(農地法5条)に許可が必要となります。
農地転用のことを一般的に「農転」といわれています。

これらの許可をとらずに譲渡したり転用したりした場合、罰則規定が適用されます(3年以下の有期懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金。農地法64条、67条)。また、無断転用の場合には行政処分=現状回復命令等を受けます(農地法51条)。しかも、無許可で譲渡がされた場合はその譲渡そのものが無効になってしまいます(農地法3条7項、5条3項)。

当然のことながら、農地を相続または包括遺贈により承継取得する場合は、農地法による許可は不要であると解されている(農地法3条1項12号では遺産分割による場合の規定がある)

ところで、このうち農地転用許可においては、立地基準というものがあります。こちらを参照。

この立地基準に応じて、原則不許可処分となるのか、許可処分となるのかが定まっています。

区分 営農条件 許可の方針
農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 原則不許可(農振法10条3項の農用地利用計画において指定された用途の場合等に許可)
甲種農地 第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の問改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法26条の告示に係る事業の場合等に許可
第1種農地 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業棟の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法対象事業の用に供する場合等に許可
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 周辺の他の土地に立地する
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可
農地法と相続税法上の評価額(財産評価基本通達)の関係について

農地の相続税法上の評価の話に戻ります。

先ほど、相続税法上の評価をする際に、農地の種類は4種類あることを示しましたが、この4種類と農地法の種類の関係は以下の通りになります。

  • 純農地・・・農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地
  • 中間農地・・・第2種農地
  • 市街地周辺農地・・・第3種農地
  • 市街地農地・・・農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の適用のない農地

したがって、農地法及び農振法で農地以外への転用が原則不許可の土地は、農地としての保護が厚いといえ、純農地として倍率方式による相続税法上の評価がなされることになります。
第2種農地である条件付き許可の土地については、農地としての保護がそこまでは厚いとはいえず、中間農地として評価がされることになります。
そして、第3種農地の場合は、すでに農地転用が原則許可されるものでありますから、市街地周辺農地として市街地農地の80%の評価となっています。

なお、都市計画法による区分との関係では市街化区域の農地は農地法による制限がありません。農地法の立地基準には当てはまらないのです。
また、都市計画区域に当てはまり、市街化調整区域または未区分の場合には第1種農地から第3種農地に当てはまる可能性がありますが、甲種農地は市街化調整区域の場合のみ当てはまる可能性があります。

それから、農地法④条または⑤条に規定する農転の許可を受けている農地は、市街化調整区域や都市計画区域以外にある場合であっても、評価上の区分は市街地農地となります。よって、この場合の農地の価額は、原則として、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当すえる金額を控除した価額によって評価します。

補足・・・農振法(農業振興地域に整備に関する法律)とは?

この法律は自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の進行を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とするものです(農振法1条)。

具体的には農林水産大臣が、食料・農業・農村制作審議会の意見を聞いて基本指針を定め、都道府県知事が農業振興地域を指定します。それに基づいて、指定を受けた市町村は、農業振興地域整備計画を定め、農用地利用計画を策定します。この中で農用地区域に指定された農地には原則として農地の転用が許可されないという効果が生じます(農振法3条ないし8条)。

もし、農用地農地について転用したい場合には、農振除外(農振法13条)を検討する必要があります。これは農地利用計画の変更を意味します。農振除外となりますと、立地基準は下のレベルに格下げになり(例えば第1種農地等)、許可方針や基準が緩くなり、許可される余地が出てきます。ただし、農振除外は行政庁の職権による行政計画の変更にあたりますので、一般私人は申請権がなく、促す意味しかない点に注意が必要といわれています。

倍率方式について

倍率方式による評価額の計算は以下の通りになります。

評価額=固定資産評価額×評価倍率

固定資産評価額は固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書または固定資産評価証明書で判明します。

納税通知書

なお、上記の画像は横浜市のものでありますが、基本的に全国どちらのものもほぼ同じ構造になっています。こちらの価格の欄が評価額になっています。また、こちらのサンプルでは現況地目等が「宅地」になっていますが、農地の場合には「田」または「畑」となっていることでしょう。

評価倍率ですが、これは路線価図と同様に「倍率表」として調査する事ができます。路線価図はこちらから参照ください。

倍率表

ここで、田や畑のところをみると、「純9.0」とか、「中36」とかでています。
「純」というのは、純農地、「中」というのは中間農地の意味です。 例えば、現況が畑、評価額が200,000円で 中間農地「中36」であるとすると、

200,000×36=7,200,000円(評価額)

なお、「比準」及び「市比準」と書いている場合は市街地農地。「周比準」と書いている場合は市街地周辺農地となります。これらは、宅地比準方式で評価する場合に利用されるものになります。

以上のように純農地や中間農地の場合には、固定資産評価額に単純に評価倍率をかけるだけで評価額が求まります。それだけ、純農地や中間農地のような典型的な農場の場合には簡単に評価ができるということのようです。

宅地比準方式(路線価地域内)について

今度は、ガラッとかわって市街地などの場合に利用される宅地比準方式についてみてみましょう。計算式は以下の通りです。

評価額=(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの宅地造成費)×地積

宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額=路線価×奥行き価格補正率等

宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額

まずは、当該土地の路線価図をみてみます。

路線価図

上記路線価図は神奈川県秦野市鶴巻温泉地区ですが、倍率地域があったり、通常の路線価地域があったり、さらには再開発による土地区画整理地域があったりしています。
このうち、実際に農地かどうかは現地をみてみないとわかりませんが、「84D」と記載されているところは普通住宅地区になります。これに対して駅前の135Cと書かれたところは◯で囲まれていますが、これは普通商業・併用住宅地区といわれます。
当該農地がどのような地区であるかを確認しましょう。

次に、当該土地の形状を考えてみます。

土地の形状

上の図のように、奥行(50m)が長い場合、奥行き補正を行います。この場合には、財産評価基準にある奥行補正率表に従います。

奥行補正率表

今回は、普通住宅地区で50mとなりますので、補正率表によると0.9をかけることになります。

※角地なら角地補正を、二方路(前と後ろに道路がある場合)なら二方路影響加算などの補正も行います。

例えば、当該農地が1,250㎡で普通住宅地区、84,000円/㎡だと考えると

宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額=84,000円/㎡(路線価)×0.9(奥行き価格補正率)=75,600円となります。

評価額について

次に、評価額を算出するためには、1㎡当たりの宅地造成費を求める必要があります。

宅地造成費については、各都道府県ごとに決められていまして、これも路線価図のサイトページに掲載がされております。他の都道府県を見たい場合にはサイトページの左上のリンクボタンをクリックください。
これによると。。。

宅地造成費

上図のように表が掲載されます。すべて、1平方メートルあたりまたは1立法メートルあたりの単位で表示されています。

例えば、先ほどの例にあげた土地について整地、地盤改良、土盛、土止が必要だとします。この中で土止費は当該土地の横のみ必要だとすると以下のようになります。

土止費=50,500円×(50m×幅1m×2面)÷1,250㎡=2,020円

よって、宅地造成費は整地費600円+地盤改良費1,300円+土盛費4,400円+土止費2,020円=8,320円

以上から評価額としては以下のとおりになります。

{75,600円(宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額)-8,320円(宅地造成費)}×1,250㎡(地積)=84,100千円

この評価方法をよく考えてみると、宅地造成をすることを前提で評価していますよね。農地というより、宅地として評価しているところに特徴があります。ですから、市街地農地である場合にこの評価方法が用いられるのですね。名前も宅地比準方式といっているのは、宅地と比較して評価していることから付けられていると推測されます。

宅地比準方式(倍率地域内)について

この方法は倍率方式を利用しつつ、宅地の場合と比較して評価する点、前2者の合わさったもののイメージになります。

①近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額×宅地の評価倍率=近傍宅地の1㎡当たりの評価額

②近傍宅地の1㎡当たりの評価額×位置、形状等の条件差=宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額

③評価額=(宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの宅地造成費)×地積

上記計算式をみてみると、

②と③については、宅地比純方式(路線価地域内)と同様の計算式になっています。異なるのは①の部分ですね。

①の部分については、路線価地域内については路線価ベースで計算されていますが、倍率地域内では路線価はありませんので、近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額(路線価と基本的な考えは同じ?!)をもとに計算がされていることがわかります。

この近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額ですが、実は一般的に公開されておらずまた固定資産納税通知書や固定資産評価証明にも記載がありません。実務的には固定資産評価証明を取るときに、窓口で近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額も知りたいと伝えるしかないようです。裁決例でもこんな記載がありました。「土地評価証明書の交付申請の際、申請者から近傍宅地の価額の開示要望があった場合には、固定資産税の土地評価証明書の「備考」欄に「近傍宅地平方メートル当り」の価額を記入しているが、この金額は、証明対象の土地が接面する道路に設定された固定資産税の路線価(上記Aにより算定された価額)である。」

その上で①の部分の計算式ですが、以下のようになります。先ほどの倍率表を再度みてみます。

倍率表

ここで利用するのは宅地のところの倍率になります。宅地であることを前提に計算するためです。これで、①の計算としての近傍宅地の1㎡当たりの評価額が算出できますね。

②の式においては、宅地比純方式(路線価地域内)と同様に奥行価格補正ですとか、角地補正、二方路補正といった補正を行います。

③の式においては、さらに宅地造成費の金額を加味するわけですが、これも宅地比純方式(路線価地域内)と同様です。

以上のように、倍率地域においても宅地であることを前提として評価していますが、①の式の、近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額はくれぐれも気をつけてください。固定資産税評価額ではありませんので。

市街地農地等の評価明細書

市街地農地等の評価明細書

原本はこちらから
市街地農地等の評価明細書は上記の通りですが、こちらの②評価額の計算内容には、路線価×価格補正か、または近傍宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額×宅地の評価倍率を記載することになります。

最後に。。。

もう一度まとめますが、下記表の通りです。

  • 純農地(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地)・・・倍率方式
  • 中間農地(第2種農地)・・・倍率方式
  • 市街地周辺農地(第3種農地)・・・市街地周辺農地とした場合の価額×0.8
  • 市街地農地(農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の適用のない農地)・・・倍率方式または宅地比準方式

長々と記述してしまいましたが、農地を相続する場合または農地の相続で遺言を作成する場合にはこの評価方法を利用すると思われますので、そのような方はぜひご確認ください。それ以外の方は読まなくても大丈夫です

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