農地の相続税評価について

農地の相続税法上の評価額の算定は農地の種類によって大きく評価方法が変わります。なので、まずは大きく農地の種類についてみてみましょう。

相続税法上の評価方法による農地の種類とその評価方法(財産評価基本通達34から36-4)

  • 純農地・・・倍率方式
  • 中間農地・・・倍率方式
  • 市街地周辺農地・・・市街地周辺農地とした場合の価額×0.8
  • 市街地農地・・・倍率方式または宅地比準方式

 

農地法について

財産評価基本通達の話からちょっと離れます。
農地法は戦後の農地改革の思想から農地の所有・耕作・経営がいったいとなった農家による自作農主義に立脚し、耕作者の農地取得の促進及び権利保護による耕作者の地位の安全を主眼とする法律です。具体的には、本来自由であるはずの農地の移転、権利設定、または転用(農地以外のものにすること)を許可制とし、規制することにしています。

もっとも、近年産業構造や人口動態の変化により農業人口の高齢化及び減少による耕作放棄地の増加、食料自給率の減少等の課題が生じています。そこで、旧農地法の自作農主義を緩和し、農地の保護、農地を効率的に利用する耕作者に夜地域との調和に配慮した権利取得の促進等を新たに法の目的としました(平成21年改正)。

①農地法では他人に譲渡したり貸したりする場合(農地法3条)、②自分が所有する農地を自分が使用する目的で転用する場合(例えば田んぼを宅地にするような場合(農地法4条))、③農地の転用を目的として農地を他人に譲渡したり貸したりする場合(農地法5条)に許可が必要となります。
農地転用のことを一般的に「農転」といわれています。

これらの許可をとらずに譲渡したり転用したりした場合、罰則規定が適用されます(3年以下の有期懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金。農地法64条、67条)。また、無断転用の場合には行政処分=現状回復命令等を受けます(農地法51条)。しかも、無許可で譲渡がされた場合はその譲渡そのものが無効になってしまいます(農地法3条7項、5条3項)。

当然のことながら、農地を相続または包括遺贈により承継取得する場合は、農地法による許可は不要であると解されている(農地法3条1項12号では遺産分割による場合の規定がある)

ところで、このうち農地転用許可においては、立地基準というものがあります。こちらを参照。

この立地基準に応じて、原則不許可処分となるのか、許可処分となるのかが定まっています。

区分 営農条件 許可の方針
農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 原則不許可(農振法10条3項の農用地利用計画において指定された用途の場合等に許可)
甲種農地 第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の問改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法26条の告示に係る事業の場合等に許可
第1種農地 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業棟の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法対象事業の用に供する場合等に許可
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 周辺の他の土地に立地する
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可

農地法と相続税法上の評価額(財産評価基本通達)の関係について

農地の相続税法上の評価の話に戻ります。

先ほど、相続税法上の評価をする際に、農地の種類は4種類あることを示しましたが、この4種類と農地法の種類の関係は以下の通りになります。

  • 純農地・・・農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地
  • 中間農地・・・第2種農地
  • 市街地周辺農地・・・第3種農地
  • 市街地農地・・・農地法及び農業振興地域の整備に関する法律の適用のない農地

したがって、農地法及び農振法で農地以外への転用が原則不許可の土地は、農地としての保護が厚いといえ、純農地として倍率方式による相続税法上の評価がなされることになります。
第2種農地である条件付き許可の土地については、農地としての保護がそこまでは厚いとはいえず、中間農地として評価がされることになります。
そして、第3種農地の場合は、すでに農地転用が原則許可されるものでありますから、市街地周辺農地として市街地農地の80%の評価となっています。

なお、都市計画法による区分との関係では市街化区域の農地は農地法による制限がありません。農地法の立地基準には当てはまらないのです。
また、都市計画区域に当てはまり、市街化調整区域または未区分の場合には第1種農地から第3種農地に当てはまる可能性がありますが、甲種農地は市街化調整区域の場合のみ当てはまる可能性があります。

それから、農地法④条または⑤条に規定する農転の許可を受けている農地は、市街化調整区域や都市計画区域以外にある場合であっても、評価上の区分は市街地農地となります。よって、この場合の農地の価額は、原則として、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当すえる金額を控除した価額によって評価します。

補足・・・農振法(農業振興地域に整備に関する法律)とは?

この法律は自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の進行を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とするものです(農振法1条)。

具体的には農林水産大臣が、食料・農業・農村制作審議会の意見を聞いて基本指針を定め、都道府県知事が農業振興地域を指定します。それに基づいて、指定を受けた市町村は、農業振興地域整備計画を定め、農用地利用計画を策定します。この中で農用地区域に指定された農地には原則として農地の転用が許可されないという効果が生じます(農振法3条ないし8条)。

もし、農用地農地について転用したい場合には、農振除外(農振法13条)を検討する必要があります。これは農地利用計画の変更を意味します。農振除外となりますと、立地基準は下のレベルに格下げになり(例えば第1種農地等)、許可方針や基準が緩くなり、許可される余地が出てきます。ただし、農振除外は行政庁の職権による行政計画の変更にあたりますので、一般私人は申請権がなく、促す意味しかない点に注意が必要といわれています。

倍率方式について

倍率方式による評価額の計算は以下の通りになります。

評価額=固定資産評価額×評価倍率

固定資産評価額は固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書または固定資産評価証明書で判明します。

納税通知書

なお、上記の画像は横浜市のものでありますが、基本的に全国どちらのものもほぼ同じ構造になっています。こちらの価格の欄が評価額になっています。また、こちらのサンプルでは現況地目等が「宅地」になっていますが、農地の場合には「田」または「畑」となっていることでしょう。

評価倍率ですが、これは路線価図と同様に「倍率表」として調査する事ができます。路線価図はこちらから参照ください。

倍率表

ここで、田や畑のところをみると、「純9.0」とか、「中36」とかでています。
「純」というのは、純農地、「中」というのは中間農地の意味です。 例えば、現況が畑、評価額が200

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