会社法人を使った相続税対策についてわかりやすく解説
相続税対策
2016年1月11日
閲覧数:2247
アパート経営をしている方や多額な現金資産がある方は相続時に相続税も多額になることがあります。
そこで、節税対策として法人を利用する方法もあります。
不動産所有法人を設立する方法について分かりやすく解説します。
個人でアパート経営をしている場合の問題点
個人でアパートを経営している場合には、相続のときに以下の点が課題となります。
- アパート収入で貯蓄してきた現金の相続
- アパート不動産の相続人への移転登記
- アパートには相続税がかかる
アパート経営がうまくいっていれば、賃貸収入で預金残高が大きくなってきます。
アパート収入の貯蓄について相続発生前までに使ってしまえば良いのですが、そうでなければすべて相続税の対象となってしまいます。
金額が大きいと相続税も多額になります。
また、アパートそのものを誰に相続させるかという点で、相続人間でもめる可能性もあります。
相続人間でアパートの収入を争うこともあるのです。
法人化することのメリット
法人化すると以下のようなメリットが生じます。
- 不動産の名義は法人名義なので登記移転は不要
- 現金貯蓄については法人の役員報酬及び給与として相続人に支払う
- アパートについては相続の対象とならず、それ以外の財産について相続の対象となる
ここで、大きなポイントとしては、やはり2番めと3番めになります。
現金を渡す場合には生前贈与ではなく給与で支払
もし、現金をオーナー個人が取得し、貯蓄している場合に、その現金を相続人に渡すとします。
当然ながら、生前贈与として贈与税の対象になります。
110万円までは贈与税は0円ですが、それを超えると10%、15%…というように発生します。
生前贈与をして相続税対策を行おうとしても貯蓄額が大きいとなかなか効果が上がらないものです。
しかし、法人の給与として支払う場合には様相が異なります。
家賃収入は一旦法人の収益になります。そして、相続人を役員にすることで役員報酬や給与という形で渡すことができるのです。当然ながら、費用としても認められます。
法人においては、収益から費用を引いた金額=利益(所得)に対して法人税がかかることになります。
法人税の場合には均等割といって年間7万円の税金は最低かかりますが、全体としては所得税や贈与税で支払う金額と比較しても安くなる傾向があるのです。
この点で、贈与税の心配をしないようになるだけ法人化するメリットがあるといえるのです。
アパートに対する相続税申告はない
個人でアパートを経営する場合には、アパートそのものが相続の対象になります。
すなわち、アパートの固定資産評価額や路線価額に対して相続税が発生するのです。この申告の手続きですが、しっかりと調査する必要がありますので手間と時間がかかります。
それに対して、財産が会社名義の場合には、不動産は会社のものですから、そもそも相続税が発生することはありません。会社は株主のものですから、株主そのものの相続がない限り相続税申告は考える必要がありません。
法人化する場合の注意点
法人化する場合の注意点として以下のことがあります。
- 株主に被相続人を入れない
- 不動産が一軒家なら5棟以上、アパートなら10室以上が目安
- 年間1,000万円以上の不動産収入があること
- 相続人は従業員ではなく役員にする
- 役員報酬や給与はしっかり計算して定額化する
- 社会保険に加入する
- 将来のアパート収入や経費についてのマネジメントプランニングをしっかり行う
特に1つ目の株主は、被相続人を入れてしまうとその株主たる地位=株式の相続について考える必要が生じます。あくまで相続人が株主となる法人にする必要があります。
不動産事業としての会社ですから、事業の体をなすポイントとして1軒家なら5棟以上、アパートなら10室以上であることが望ましいです。もちろん、地域の不動産事情などもありますので必要不可欠というわけではありませんが、1軒のみの不動産などで法人化するのはあまり合理性はないでしょう。
また、不動産収入については、目安として1,000万円以上の不動産収入であることが望ましいです。1,000万円未満の場合には、法人化するより個人の所有のほうが望ましいです。
法人化する場合の手順概要
1.法人化すべきかどうかを判断
個人の場合の相続税額の算定を行い、物件数や不動産収入規模、タックスプランニング等を行い法人化が向いているかどうかを判断します。
2.法人設立
法人設立は株式会社で設立します。設立時資本金は事情に合わせて検討できます。なお、設立時株主には被相続人は入りません。
そして、相続人を役員に選任します。ただし、役員があまりにも多いのも問題が生じる可能性がありますので注意しましょう。
3.会社への物件の譲渡
オーナーから不動産物件を購入します。価格には、建築時費用の価格、不動産鑑定に基づく相場価格、固定資産税価格、帳簿価格等がありますが、もっとも低い価格が望ましいです。一般的には帳簿価格でしょう。
4.不動産収入を収益計上、役員報酬を費用計上
通常の会社経営と同様に、会計帳簿をつけます。決算月には決算をしめて、法人税申告を行います。
まとめ
不動産を法人所有へすることは入念な検討と準備が必要です。
不動産から得られる賃貸収入によっては、個人所有のままの方が節税になる場合もありますので、必ず税理士に相談して現状をすべて把握してもらってから、税金のシミュレーションをしてもらいましょう。
この記事について