遺言と辞世の句ってどう違う?

終活ブームの中、遺言の書き方の本が多数出版されたり、偉人の遺した言葉を集めた特集記事が雑誌で組まれたりしています。立派な人が遺した言葉には深い人生訓が含まれていますから、これからの人生をよりよく生きるための指針とする人もいるでしょう。「遺した言葉」というと、「遺言・辞世の句」とひとくくりにされがちですが、この二つ、いったい何が違うのでしょうか?

遺言は遺される人のためのもの

遺言には二つの意味があります。 狭い意味では、法的効力を持った遺言書の内容のことを指します。この意味での遺言には、絶対に従わなければなりません。このとき、法律用語として「いごん」と呼ばれる場合が多いです。

広い意味では、ある人が死後のために遺す言葉全般を指します。声に出して伝えたり、文章で書き遺したりと、形式は自由です。多くは「ゆいごん」と読まれ、通常「遺言」と言って思いだされるのは、法律用語よりもこちらの方の意味でしょう。

自分では遺言のつもりはなくとも、遺された子どもたちが「おやじの遺言だから」などと、印象に残った言葉やいいつけを大事にすることもあるでしょう。この場合は「遺訓」とも呼ばれますが、広い意味での遺言の一つのかたちといえます。

辞世の句は自分の人生の総括

一方、辞世の句は、死に際して詠む和歌や俳句などのことです。死後に遺される言葉であると考えれば、広い意味での遺言と重なるところがありますが、決定的に違う点があります。死後の希望が含まれているか否かという点です。

遺言は自らの意思を後世に伝えることで、死後に実現してほしいという希望が含まれています。一方、辞世の句は自らの人生を総括して詠まれることが多いので、後世への希望は、基本的には含まれません。

ただ、辞世の句を詠むという行為には、それを目にした人に自分の生き様を感じ取ってほしいという願いが少なからずあることでしょう。遺された人が辞世の句から何かを学び、生きる指標とするのであれば、そのときはじめて辞世の句は遺言になるといえるでしょう。その場合、「遺訓」としての遺言と同じ意味になると考えられます。

とはいえ、捉え方によっては遺言といえる、という程度では、辞世の句が遺言であるとするには弱く、基本的には、遺言と辞世の句とは、分けて考えます。広い意味での遺言には形式がありませんが、辞世の句には短歌、漢詩、発句、詩といった形式があります。また、遺言はいつ用意してもよいものですが、辞世の句は死を覚悟したときに詠まれなければ、総括になりえません。

遺言書でも、「付言」で思いを残せる!

狭い意味での遺言、つまり法的効力を持った遺言書を用意しようという人の中には、子どもたちへの遺訓や、配偶者への感謝の言葉、そして辞世の句などを盛り込みたいと願う人も多いでしょう。しかし、遺言書は相続のもととなるものですから、文章の形式は厳密に決まっています。それに従って書いていくと、遺言書の文章は何とも無味乾燥なものになってしまいます。

実は、遺言書には大きく二つの内容に別れています。一つは、形式が決まっていて法的効力を持つ「法定遺言事項」。もう一つが、法的効力を持つ事を目的としていない「付言事項」です。この「付言事項」に、自分の思いを盛り込むことができるのです。

付言事項に家族へのメッセージを書けば、狭い意味での「遺言(いごん)」に、広い意味での「遺言(ゆいごん)」をプラスした遺言書を作成することができ、自分の意思がより具体的な形で家族に伝わることでしょう。
もちろん、付言事項を使えば辞世の句を記すことも可能です。しかしこの場合、難しいのがタイミング。遺言書は余裕を持って用意しておくべきものですから、作成した時点で辞世の句を詠もうと思っても、死への実感がまだ湧かないかもしれません。

辞世の句や遺言を作りたいなら

偉人が遺した辞世の句を見てみると、「何を惜しみ 何を恨まむ もとよりも このありさまの 定まれる身に」 (陶晴賢)や「嬉しやと 再びさめて 一眠り 浮き世の夢は 暁の空」(徳川家康)など、潔さや無常観を顕わにしたものが目立ちます。

このことから、きれいな散り際を詠まなければならないと思う人も多いかもしれませんが、先入観にとらわれず、自分らしい言葉を残したいもの。「思ひおく まぐろの刺身 鰒汁 ふっくりぼぼに どぶろくの味」(新門辰五郎)なんて、この世に未練タラタラなものもありますよ。

また、遺言として何か立派な言葉を子どもに残さなければ、と思い悩んでいる人は、そう焦らなくてもよいかもしれません。親が気にも留めていない言葉を、子どもが大切な教訓として覚えていることも多いもの。自らの親について思いを巡らせたときにも、聞こえてくる言葉があるのではないでしょうか。
 

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