追悼、原節子さん。去り際も散り際も「いつの間にか」

伝説の大女優、原節子さんが昨年9月に95歳で亡くなりました。1935年、田口哲監督の「ためらふ勿れ若人よ」でデビューを飾ってから、「青い山脈」「東京物語」など名作に次々と出演したにもかかわらず、1963年に引退してからは公に登場することがなかった銀幕のスターです。その潔い去り際と散り際を振り返ります。
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出典:Flickr japanesefilmarchive

出演映画は27年で107本

女学校を中退して日活に就職した原さんの本名は、会田 昌江(あいだ まさえ)。デビュー作の役名から「原節子」という芸名が生まれました。
それから42歳で女優業に終止符を打つまでに原さんが出演した作品は、スポーツ報知などによれば107本と言われていますから、1年に4本弱のペースで映画に出ていたことになります。吉永小百合さんがデビューからこれまでで120本あまり、子役デビューの高峰秀子さんが50年で140数本などといわれていますから、原さんが早くに引退しなければ、日本映画の女性最多出演記録を持っていたことは間違いないでしょう。

デビュー当時、大柄で目もぱっちりと大きい原さんは、それまで日本にはいなかったタイプの新しい女優として注目されました。すぐにドイツのアーノルド・ファンク監督から声がかかり、日独合作映画「新しき土」のヒロインとして抜擢され、国際女優として祖国に錦を飾ります。それから、一躍トップスターに躍り出たのです。

非の打ちどころのない美貌を持っているからか、「美人だが演技はたいしたことがない」という批評を浴びせられることもありましたが、彼女の実力を誰よりも評価していたのは、日本映画の巨匠・小津安二郎監督だったと言われています。

小津安二郎監督、原節子さん主演の「東京物語」は、英国映画協会が発表している「映画監督が選んだオールタイム・ベスト100」の2012年版で、堂々の第一位を獲得しています。主演女優が大根役者だったら、絶対に獲れない栄誉ではないでしょうか。

人気絶頂の中、突然の引退

原さんが演じた役どころとしてイメージされるのは、「若妻」。明るくハツラツとしながらも、芯の強い妻を数多く演じてきましたが、原さんが実際に結婚することはありませんでした。このことから、「永遠の処女」とも呼ばれています。

しかしこれほどの大女優ですから、マスコミは当然、その色恋に興味津々。結婚のうわさが流れた時期もあり、そのお相手は小津安二郎監督でした。噂の真相は分かっていませんが、原さんがスクリーンから姿を消した時期と、小津監督が死去した時期は重なっています。

原さんは1963年12月、小津監督の通夜に参列した後、一切の映画作品に出ていません。1968年に小津との共同脚本家であった野田高梧氏の通夜に参列してもいますが、世間一般的には、小津監督が死去した1963年をもって引退したとされています。

正式な引退宣言はなされておらず、女優を辞めてしまった理由については様々な憶測が流れました。小津監督に殉じてのものであると言われたほか、撮影中に起きてしまった実兄の事故死が原因でノイローゼになってしまった、体調をくずした、忙しすぎた等々。しかし、真相は闇の中です。

親族に守られて静かな生活

引退してからは、鎌倉に家を建て、亡くなるまでそこで暮らしました。鎌倉には義兄夫婦が住んでおり、その縁を頼ったのです。姉の夫である義兄は、原さんが日活に就職することを勧めた熊谷久虎監督。引退後、マスコミは原さんになんとか姿を見せてほしいとあの手この手で取材を試みますが、熊谷さん一家がそのすべてに対応したと言われています。

原さんの最期を看取ったひとりが、熊谷監督の息子、つまり原さんの甥にあたる熊谷久昭さんです。原さんは2015年8月、肺炎にかかってそのまま入院。9月5日に親族4人がその最期を看取りました。その後、本人の遺志により2か月半もの間公表せず、11月25日に初めて明らかにされています。

生き方そのものが伝説化

高らかな引退宣言も、逝去後すぐの報道もなかった原節子さん。いつの間にかスクリーンから消えてしまい、その面影を日本中の人々に残しながら、約50年もの間沈黙を続けました。そしてまた、いつの間にか体調を悪くし、この世から消えてしまっていたのです。
大女優が「いつの間にか」人々の前から姿を消すというのは、並大抵の覚悟では実現しえません。称賛も、それによって得られる富も捨てる潔さ、どんな口説き文句にも耐える強い意思、そして彼女の意思を支え守る身内が存在したからこそのこと。しかしそれによって、伝説はさらにその色を濃くしました。原節子さんの潔い生涯は、末永く語り継がれることでしょう。
 

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