手紙葬は自分のための最高のお葬式?

お葬式も個性化・多様化の時代を迎えています。その中で静かに人々の心を動かしているのが「手紙葬」というお葬式です。遺産相続の際の遺書もそうですが、「言葉を書いて残す」ということは、私たちが思っている以上に大きな意味を持っているのです。
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自由になったお葬式のあり方

近年のお葬式

最近はお葬式を一切やらないでそのまま火葬場へ直行するか、やっても「家族葬」「密葬」よりもさらに小規模で簡便に済ます「直葬」が増えてきています。これには経済的な問題も大きいのですが、昔ながらの形式にとらわれず、人生の最期くらい自分の思いどおりの形で締めくくりたいと考える人たちが増えているせいでしょう。
 

自由が苦手

しかし、いざ本気でそのことを考え出すと、自分も家族も周囲もすべて満足・納得させるような葬儀をセルフプロデュースするのは難しいようです。それで結局、葬儀社が提案するものか、それに類するパターンに落ち着くケースになりがちです。
 

手紙葬という発想

ラストメッセージを大事な人に

そんな中でこの手紙葬はとてもユニークです。生前にラストメッセージを送りたい人に宛てて手紙をしたためておき、亡くなったらお葬式はいっさいやらない。その代わりにそれらの手紙を、頼める人たちに配達してもらうのです。
 

その裏側にある心づかい

この手紙葬を実際に行った人(故人)は、「突然のお葬式のために雨風の中、わざわざ仕事を休んで参列してもらっても、生きている本人には会えない。それでは申しわけない」という気持ちを持っていました。
だから世間一般の通夜、葬式、納骨を行わないようにと。といった遺言を家族に遺していました。それでその遺言どおり、家族は「手紙」を生前親しくしていた人たちに送ったのだそうです。
 

こころに残る文章

手紙を受け取った人の話によれば、文面には残った人の幸せを願う思いが綴られており、結びには「ありがとう、さようなら」とあったと言います。
ゆっくりとよみがえる、ともに過ごした日々の記憶。じんわりと残る故人の残像。受け取った人の心に深く残ることはもちろん、この手紙葬のことを知った人も、文章をつづった人の人柄を偲んで静かにこころ癒されるでしょう。
 

もし手紙葬をやるなら…

手紙葬のメリット・デメリット

お金がかからない、お葬式を出す際の労力もいらない。また、病気や高齢でお葬式に参列できない人たちへの心遣いに満ちている…手紙葬には多くのメリットがあるようです。
ただ本人が手紙を書くだけの手間ひまをかけられるか、そして、それを運んでくれる“配達人”を頼めるかどうかがデメリットというか、課題です。
別に名文を書く必要はないので、文章の得手・不得手もそんなに気にしなくてもいいし、どうしてもうまく書けない、あるいはうまく書きたいと言うのなら、プロのライターを呼んで代筆を頼んでもいいでしょう。
 

最期の手紙を送る意味

誰に送る?

そして、手紙を差し出す相手を考えていくと、自分がそこまで大事に思う人間は何人いるのか、自然と分かってくるのではないでしょうか。なぜなら以後の(少なくともこの世での)付き合いはもうなくなるわけですから、年賀状などのように社交辞令や義理やしがらみで書く必要はまったくないのです。
 

手紙葬のもう一つの大事な役割

自分の人生が終わることを伝えたい相手、心から幸せを願う相手が何人いるか…手紙葬をする、最後の手紙を出す、という目的でじっくりと考えることは、自分の人生の振り返り、トータルで満足できるものだったのかどうか、に気付かされるに違いありません。
 

まとめ

もし、家族や周囲の人たちが、やはり供養の意味でお葬式を出したいというなら、それには構わず、自分の意志で手紙葬は実行してもいいのではないでしょうか。他の誰でもない、自分の人生の幕を下ろすためにも。
(参考:おひとりさまの法律/中澤まゆみ、活研)
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