遺体を解剖してもらう献体(けんたい)が人気!?献体の申込方法と手続きを解説
最近テレビを見ていると、散骨や樹木葬、永代供養などといった葬儀やその後のことが良く取り上げられていますが、自分の死後は献体を希望するという人が近年増えています。ちょっと気になりますね。ここでは献体について知っておくべき事を取り上げてみたいと思います。献体する本人も、その家族も知っておくべきことを取り上げます。
解剖用に遺体を提供する「献体」の仕組み
献体(けんたい)とは?
献体は、大学で行われる「正常解剖」と呼ばれる解剖に遺体を提供することです。大学で行われる解剖には、「正常解剖」「病理解剖」「法医解剖」の3つがあり、そのうちの「正常解剖」は、人体の構造を調べ、大学で学ぶ医学生の教育のために行われるものです。
体のすみずみまで、細かい部分も解剖
解剖というと胸を切り開いて内臓を観察というイメージがありますが、大学で行われる正常解剖では、血管や筋肉の位置や構造を学ぶためなど、全身にメスが入れられます。眼科医の育成のために、眼球にもメスが入れられます。
また骨も解剖されます。骨まで解剖されるため、火葬後のお骨の量はすこし少なくなるようです。
遺体が返ってくるのは3年後!?
遺体は解剖後、火葬されて、お骨で家族の元へ戻ってきます。
お骨で戻ってくるまでは、すこし時間がかかります。細かい部分まで研究のために使われるので、通常1年から1年半は遺体は戻ってきません。献体数の状況によっては3年くらいかかる場合もあるようです。
献体の申し込み方、気になるポイント
献体は事前の登録と家族の同意が必要
献体をしたいと思ったらどうすれば良いのでしょう。遺言に書いておく?いえいえ、献体は生前に「本人の意志」で死後に遺体を献体するという登録をしておく必要があります。臓器提供は本人の死後、家族の意志だけでも可能になりましたが、献体は本人の意志が必ず必要です。
一般的には、医学部のある最寄りの大学に問い合わせれば担当の窓口を教えてもらえますから、そこに連絡すれば必要な書類が送られてきます。大学によって書類や書式が違いますが、「正常解剖申込書」といった書類が送られてきます。この用紙に署名捺印すれば良いのですが、重要なのが肉親の同意です。正常解剖申込書には本人以外に2人程度の肉親の同意者が署名捺印するようになっています。肉親の同意がないと献体の申し込みは受け付けてもらえないのです。
肉親の同意が得られたら、他に病歴を書く用紙なども記入し、申込書と一緒に返送すれば献体の登録が出来ます。献体の登録が受け付けてもらえたら、献体登録を示すカードが送られて来ます。これで献体の準備は出来ました。
献体登録は順番待ち!!
前述の申込書を返送すれば献体の登録はできるのですが、最近は送られてくる献体登録のカードが仮登録になっている事が多いようです。というのも、ここ数年来、献体を希望する人が多く、本登録の順番待ちが発生しているのです。献体登録に年齢の下限を儲けているところもあるようです。例えば60歳以上でないと登録できないというような年齢制限です。また、献体希望者の受付を一時停止しているところもあるようです。
では、仮登録のまま死亡したら、献体できないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。仮登録のまま死亡しても、本登録と同じように献体は受け付けてもらえますので、心配は無用です。ただ仮登録の間は、献体登録者の交流会に参加できないなどの制限があります。
お葬式は出来るの?
結論から言えば、お葬式はできます。ただ、遺体を提供するタイミングで遺体が無い状態でのお葬式になる場合もあります。お葬式に遺体が無いのはさみしいと思えば、大学と相談して葬儀をしてから遺体を提供します。この場合は普通にお葬式をあげて、出棺のタイミングで大学が用意した霊柩車で遺体を大学に運ぶことになります。
通夜だけして遺体を提供、あるいは死亡後すぐに遺体を提供することもできますが、その場合は遺体が無い状態での葬儀になりますので、遺髪や遺爪を取っておく事も考えましょう。
献体すると、搬送費用と火葬費用は大学が負担してくれる
献体に費用はかかりません。大学から霊柩車が無料で迎えに来てくれますし、解剖後の火葬の費用も大学が負担してくれます。
かといって、葬儀費用が全て大学負担になるわけではありません。火葬だけで済ませるのであれば確かに費用はあまりかかりませんが、通常どおりのお通夜、告別式をするとなればそれにかかる費用は遺族が負担することになります。
献体している方が亡くなった場合の手続きの流れ
家族の手続き方法
では、献体登録している本人が死亡したら、どうしたらいいのでしょう。本人は死亡しているわけですから、ここからは家族(遺族)がすることになります。生前に家族によく話して、協力してもらえるようにしておかなければなりません。
まずは献体登録してある大学に家族が連絡します。この連絡は出来るだけ早い方が良いようです。遺体を提供する日時、葬儀の前か後かなどを大学と相談して決めます。日時が決まれば、その時刻に合わせて大学から遺体を運ぶための霊柩車が迎えに来ます。その際、死亡診断書、火葬許可書が必要です。霊柩車が出発したら、お骨になって帰ってくるまで当分の間お別れになります。
献体が出来ない5つのパターン
せっかく献体の登録をしたのに、献体できない場合がいくつかあります。
- 献体登録したが、本人が死亡後に家族が反対
- 事故死、変死した
- 病理解剖になった
- 臓器提供した
- 一部の感染症に罹っていた
上記のような場合、献体できません。
臓器提供と献体、これは悩ましいところですが、どちらか選ばなければいけません。また、生前に献体の登録をしていても、死後に家族が反対すれば献体は出来ません。生前に、献体したいという意志を家族にきちんと理解しておいてもらうことが必要です。
標本になることも
解剖の際、教育上あるいは研究上、貴重な所見が認められた場合は、標本として保存されることもあります。後生まで自分の体の一部が残って、いろいろな人に見られることになるのは、ちょっとうれしいような恥ずかしいような微妙な気持ちになりますね。
まとめ
献体をすると、長期間お骨が戻ってこず、家族がさみしい思いをすることもあるでしょう。体中にメスが入ることを想像すると辛い思いをするかもしれません。でも、本人が死亡したら家族が献体登録してある大学に連絡するなど、家族の協力が欠かせません。
献体は、医学のためには絶対に必要なことです。生きているうちに家族に献体をしたいという気持ちをきちんと理解してもらい、協力してもらうことが大切です。献体を考えたら、まず家族とよく話し合うことが重要になります。
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