必ず押さえておくべき!不動産を売却するときの売主責任と危険負担

不動産を売却するときの売主の負担は?

不動産を売却するときには気をつけなければならないことは多くありますが、その中でも複雑なものは「売主責任」や「危険負担」と呼ばれる問題です。

不動産に欠陥があった場合法律はどうなっていて、どう対応すべきなのか重要な問題なのに知っている人は少ないと思います。

そこで、今回はこの「売主責任」・「危険負担」について解説します。

事例 ~建物に欠陥が!~

あなたは築25年のビルを一棟持っていましたが、この先、財産を整理するために現金化しようと考え売却しました。
あなたも買い主も気がつかなかったのですが、このビルは実は防水工事が不完全だったのです。当然、防水工事の不完全は素人目にはわかりませんし、雨が徐々にビルを劣化させていました。そして買い主が購入し、引渡しを受けてから半年ほどで雨漏りするようになってしまいました。
修繕費用は500万円かかるそうです。

買い主はあなたにどんなことを主張するでしょうか?
(細かい契約条項はないものと考えます)

この事例のポイントは?

まず、この問題は基本的には「民法」という法律で解決することになります。

「売主責任」は正式に法律用語で「危険負担(きけんふたん)」といいます。

「危険負担」とは「誰が責任を負担するか?」ということです。

そして、この事例のどこが問題点だと思いますか?

2つの大きな問題点を挙げます。

  • ひとつ目は、売主も買主も防水工事の不完全は知りませんでしたし、それによって徐々に建物が傷んでいたこともわかりませんでした。

  • ふたつ目は、売主が買主に売り渡した後だ、という点です。

つまり、誰も知らなかったにもかかわらず誰かが責任をとって500万円の修繕費用を負担しなければならないのです。

ちなみに、施工業者の責任と思う方もいると思いますが、実はこのケースでは施工業者の責任を問うことができないのです。

それは施工から25年という長い時間が経っているからです。犯罪など(「刑法」)で有名な「時効(じこう)」というものです。

「民法」にも時効やそれに似た制度があります。民法の時効は一つのテーマになるくらい複雑ですからここでは割愛します。

さて、少し乱暴な言い方ですが、売主の側からは「もう自分の物ではないし、そもそも欠陥を知らなかったのだから責任を取れと言われても困る。」

ということが言えますし、買主の側からは「欠陥のある物を売られた上に修繕費用を払うことは納得ができない。」でしょう。

責任を負うのは誰?

まずズバリ、この事例の場合、法律上はこのビルの修繕費用は売主が責任を負わなければならないのです。

これは、売主に落ち度がなくても負わなければならない責任なのです。

なぜか?実は争いがあるところですのではっきりとその理由を示すことができないのですが、一つは「契約したからには欠陥のない物を提供する責任が売主にはある」と考えられているからです。

買主は、損害賠償や目的を達成できないような場合には契約の解除などを主張できます。

売主は必ず責任を負う?

今回の事例の場合、売主が責任を負わなければなりませんが、必ず責任を負わなければならないのでしょうか?

「必ず責任を負う」となると、いくら法律で決まっていることとはいえ不公平な印象を受けます。

そこで、まずは買主が欠陥を知っていた場合、買主は売主に「責任を取れ!」とは言えません。

欠陥を知っていて買ったのに後から文句を言ってそれが認められることはそれこそ公平ではありません。

次に、買主は欠陥を知った時から1年以内に欠陥があったことを主張しなければいけませんが、これはさらに、物の引渡しを受けた後10年以内に主張しなければならないのです。

つまり、引渡しを受けてから15年後に欠陥を見つけても「責任を取れ」との主張は認められません。

これは、このように法律を定めておかないと、売主は永遠に責任を負わなければならないことになり、やはり公平ではないからです。

このように売主は法律上、責任を負わなくてもよい場合があります。

売主の側から責任を負わなくてもよいようにできるか?

皆さんが知りたい大事なところだと思います。「売主の側から責任を負わないようにできるか?」ということです。

これは可能です。そのように契約すればよいのです。

例えば、よくいわれる「現状渡し」ということです。これは、「物を現状のままで買い取るのでその後何か欠陥が見つかっても文句は言いません。」という契約です。

このような契約が当事者双方の同意で締結されていれば売主は責任を負うことはありません。ただ、買主としてはそのような契約は結びたくないところでしょう。結局のところ話し合いにより契約を結ぶ必要があります。

ただし、売主が欠陥を知っていて現状渡しをした場合、または欠陥が通常考えられるよりもるかに大きい場合には現状渡しの契約をしていたとしてもその契約は認められません。

危険負担の具体例は?

最後に売主に責任が認められた具体的な欠陥をいくつかご紹介します。

・建物が建ぺい率違反だった
・契約後、南側に高い建物が建った(庭で園芸をする目的で購入している)
・建物で自殺者がでていた(説明されていなかった)
・構造上の欠陥や不完全な工事

などです。

まとめ

今回の「危険負担」は基本的には売主が欠陥の責任を負うこととなります。

また、その欠陥の具体例は裁判でもいくつか示されてはいますが、事情により様々なケースがあります。

そのため一概にこれは「欠陥にあたる」「欠陥にあたらない」とはいえないですし、実務としては専門家にお願いすることになると思います。

しかし、「危険負担」に関する基礎知識を持っておくことは重要です。これを少しでも知っておけば専門家へもお願いしやすくなることでしょう。

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