相続放棄の手引き【保存版】|相続放棄に関する疑問を全て解説!
相続が発生したとき、財産がある場合にはその一切の財産を引き継ぎます。
特に、不動産名義の変更や預金の解約など手続きが大変になります。
しかし、プラスの財産が少なく、借金が多い場合などもそれを引き継ぐとなると大変になってしまいます。
そこで、法律上は借金などの財産がマイナスである場合に、相続をしないようにする相続放棄という制度があります。
この相続放棄という手続きを踏まえると、その人のみはじめから相続人とならなかったものとみなされることになります。
このページでは相続放棄について、相続放棄の概要、手続き方法、注意点など様々な課題について各記事で解説しています。
相続放棄の制度概要
相続放棄は明らかに借金が多くて財産がマイナスになる場合に活用できるものです。
しかし、プラスになるのかマイナスになるのかよくわからない場合には、戸惑うこともあるでしょう。
そこでこのような場合に活用できるものとして「限定承認」という制度もあります。
ただし、この限定承認は相続人全員で話し合って、全員で手続きを進める必要があります。
ですから、手続きとしてはちょっと面倒ですね。
相続放棄は相続人一人でも手続きが可能です。その手続は家庭裁判所に相続放棄の申述の手続きを行うことによってできます。
参考記事:借金を相続放棄する方法を徹底解説
相続分の放棄
相続分の放棄というものもあります。
これは、一旦相続した後、遺産分割協議の時に分割をしないということを意味します。
確かに、面倒な相続放棄や限定承認の手続きを踏まえない点でいいように思えます。
しかし、遺産分割協議で分割ができるものはプラスの財産のみで借金などのマイナスの財産は分割協議ができません(東京高裁昭和37年4月13日決定)。
この場合には、借金は法律上の相続分で分割され、相続人皆さんで借金を抱えることになりますので、ぜひ注意しましょう。
手続きの期間は3ヶ月以内
相続放棄は相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に手続きをする必要があります。
ただし、実際には、死亡後、お葬式やら四十九日法要やらで忙しい毎日を過ごしていると時がたつのは、早いです。
しかも、借金があるのかどうかということを調べると、さらに1ヶ月はかかってしまいます。これでは3ヶ月はあっという間に過ぎてしまいます。
そこで、3ヶ月では足りないという方は家庭裁判所に対して「相続放棄申述期間の伸長」を求めることができます。これが認められれば熟慮期間はさらに3ヶ月延長されます。
相続放棄申述期間の伸長の申立ては申立ての趣旨と理由を記載する必要があります。特に、理由には債務がまだ判明していないことや、その判断に相当の期間がかかる旨を記載するとよいでしょう。
参考記事:家庭裁判所での相続放棄手続きのまとめ
3ヶ月の期間を過ぎてしまったときの相続放棄の対応方法
相続放棄をするとはじめから相続人ではなくなる
相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったものとみなされます。
で
は、その相続人に子供がいた場合にはその子供が相続人になるのでしょうか?
通常、おじいちゃんが亡くなったときにすでに息子がいない場合、息子の子供が相続人になります。これを代襲相続人といいます。本来的に息子が相続し、その相続人である孫が財産を承継する流れになるのに、息子が先に亡くなっていた場合に孫に相続権がないのはおかしいと思えるからです。
では、息子が相続放棄の時に代襲相続として孫は相続人になるのかというと、これは認められていません。
代襲相続は息子が死亡した場合や相続欠格に該当した場合、廃除された場合に限り認められ、それ以外は代襲相続人になれないのです。
相続放棄の手続き
相続放棄の手続きは家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して行います。
申述書には申述人や被相続人に関する情報を記載する必要があります。
この情報には本籍、住所、生年月日、職業などがあります。詳しくは、裁判所のホームページを参照ください。
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7427souzokuhouki-seizin.pdf
なお、この申立書の2枚目には申述の理由の記載欄があります。
ここには、相続の開始を知った日及び資産の状況と負債の状況を記載します。そして、放棄の理由を選択します。
放棄の理由には以下のものがあります。
1.被相続人から生前に贈与を受けている
2.生活が安定している。
3.遺産が少ない
4.遺産を分散させたくない。
5.債務超過のため。
6.その他
債務が多い場合には5番を選択するでしょうが、意外と4.の遺産を分散させたくないという理由も多いようです。
参考記事:相続放棄申述書の書き方
相続放棄申述手続きにおいて必要な書類
相続人の状況に応じて多少異なりますが、概ね以下の住民票除票などや戸籍謄本が必要となります。
これらは相続人が誰かということを証明するためです。
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載(除籍とかかれます)のある戸籍謄本
参考記事:相続放棄の必要書類リスト
相続放棄の申述と照会について
相続放棄の申述手続きを上記の必要書類を揃えて家庭裁判所で行った後に、詳しく話を聞きたいという場合があります。これを照会手続きといいます。
書面での照会という場合のほかに、直接呼び出しがされる場合もあります。
どのようなことを確認するのかというと、以下のようなことです。
- 相続放棄の申述があったことを知っているか、その手続きは誰が行ったか?
- 相続財産を処分したり隠したり、使ってしまったことはないか
- 相続放棄の申述は自分でしたのか
- 自分の意思で申述をしたのか
- 相続放棄をする理由
- 亡くなった人に資産・負債があると思ったか
- なぜ資産・負債があるか・ないかと思ったか
- 亡くなった方に負債があることを知った時期
- どのようにして亡くなった人に負債があるかを知ったか
相続放棄受理証明書の使い方
相続放棄手続きがなされるとそれで終わりというわけではありません。
債権者に対して相続放棄したことを伝えたり、不動産登記移転の手続きにおいて相続放棄がなされた証明書としてこの相続放棄受理証明書が必要になります。
なお、相続放棄受理証明書を発行してもらうには相続放棄受理証明申請書を家庭裁判所に提出する必要があります。
この受理証明申請書には、以下の項目を記載する必要があります。
相続放棄申述をした際の
- 事件番号 平成◯◯年(家)第◯◯◯◯◯◯◯◯号
- 事件名 相続放棄申述事件
- 申述人
- 被相続人
- 受理日
なお、相続放棄受理証明書を交付する料金は1通につき150円となります。これは収入印紙をはることで収めます。
参考記事:相続放棄受理証明書の基礎知識。入手方法と利用方法
相続放棄の手続きの流れをわかりやすく解説
相続放棄にかかる費用
自分で手続きをおこなう場合
収入印紙 | 800円 |
裁判所と連絡をとるための切手代 | 裁判所による、400円程度 |
なお、相続放棄に必要な書類の収集にあたっては以下の料金がかかります。
戸籍謄本 | 通常1通450円 |
除籍謄本 改正原戸籍 |
通常1通700円 |
住民票 | 通常1通300円 |
専門家に相続放棄を依頼する場合
上記の費用の他に、専門家への報酬が発生します。
3ヶ月経過前のもの | 約3万円~ |
3ヶ月経過後のもの | 約6万円~ |
相続放棄の注意点
相続放棄をしたとしても、財産の一部を勝手に売ったり、隠したりした場合には、単純承認したものとみなされます。借金も一緒に相続することになりますので気をつける必要があります。
相続放棄は相続人間で話し合って決めるのがベスト
相続放棄の効果は相続人が最初から相続人でなかったということです。
誰かに、相続財産を集中させたい場合には法定相続人全員のみならず、第二順位の相続人なども関係する可能性がありますので、その点を考慮する必要があります。
債務がある場合の相続放棄は一人でも相続放棄しない相続人がいるとその人がすべての債務を負うことになります。
その場合には、第二順位の相続人なども含めて全員で相続放棄する必要があります。
このようなことを事前に話し合っておく必要があります。
参考記事:相続放棄を相続人全員がする場合の3つのポイント
故人が連帯保証人だった場合の相続、相続放棄のポイント
相続放棄と生命保険
相続放棄をするとはじめから相続人にならないということになりますが、生命保険金は受け取れなくなるのでしょうか?
生命保険の契約によるのですが、通常は生命保険の受取人がそのまま保険金を受取る契約になっていると思われます。この場合、いわゆる相続財産ではありませんので、そのまま保険金は受け取れることになります。
ただし、保険金が相続財産ではないというのは民法上のお話で、相続税法上は「みなし相続財産」として課税の対象になります。その点はご注意ください。
参考記事:相続放棄をしたら生命保険はもらえなくなるか?相続放棄の注意点
相続放棄と遺族年金
遺族年金は相続放棄をするともらえなくなるのでしょうか?
実は、遺族年金は被相続人の相続財産ではありません。あくまで遺族の固有の権利です。
「子のある配偶者」または「子」に支給されるもので、相続人が対象ではないのです。
ですから、相続放棄をしたとしても遺族年金は支給を受けることができます。
相続の限定承認
プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には相続放棄の手続きを行うことはいいのですが、どちらが多いかわからない場合に限定承認という制度があります。
プラス財産-マイナス財産(負債)=プラスのとき
負債を精算した残りの財産を相続人が相続することができます。
プラス財産-マイナス財産(負債)=マイナスのとき
本来は負債分を相続人が支払うべきところ、相続放棄と同様に誰も相続しないということができます。
つまり、プラスなら相続でき、マイナスなら放棄するという“いいとこどり”の制度がこの限定承認です。
ただし、手続きは面倒です。相続人全員が揃って限定承認の申述を家庭裁判所で行う必要があります。
また申述書の書き方は相続放棄の場合に近いですが、財産目録を作成する必要もありますのでやはり面倒といえるでしょう。
参考記事:相続放棄と限定承認の違いを分かりやすく解説!
相続限定承認とは?手続き方法と費用のまとめ
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